都会と大都会と街と、静岡のエディ・マーフィについて

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都会の定義、というと難しいが、僕のなかでは「小さな映画作品やライブが素通りしないこと」が必須条件となっている。
例えば「全国ツアー公演」が開催された時、東京、横浜、そして名古屋と、いつも静岡は無視される。「興味のある人は新幹線で近隣の大都市に行けばよろしい」という事なのだろう。大抵のビッグ・イベント・キャラバンにとって、静岡県は「通過するのに時間がかかる土地」程度の認識なのだろう。まあ、静岡県中部に住んでいても、たまに他県に行く際には「おやまだ静岡県か。もう飽きた」と思うくらいだから、それはもう仕方がない。「のぞみ」が停まらないことも、仕方がない。

 

大都会というと、「浮浪者が寝ている公園」が条件となる。
これは小学校の修学旅行の際の体験が元になっている。あの頃の東京は、本当に大都会だった。
最近は近所の公園にも数名の浮浪者の人達がいるけれど、ほとんど顔ぶれは変わらないから、ただの「不潔な人達」といった認識。これが「不特定多数の人達が入れ替わり立ち代り浮浪生活を営んでいる」となると、大都会っぽいと思う。

 

ちょっと頭のおかしい人が交差点で騒いでいて、でも皆がほとんど気にもとめないのが「街」であると、知人は言う。だから静岡市の中心街は「街」なのだと。

なるほど、僕の住む市には大きなショッピングモールがあるけれど、でもあそこで「受信した電波をまき散らして」いたら、たぶん大騒ぎになる。警備員だってやってくる。商店街なら、なおさらのこと(商店“街”だが、やはり田舎なのだ)。

そして今日、まさしく静岡市の中心街で、その「頭のおかしな人」に遭遇した。
どう見ても中年女性で、自分の事は「俺」と言う。男物の、黒いスーツを着ている。
その「俺」である女性は、信号待ちをしている人達に、大きな声で話しかけていた。さっと近寄り、素早く指さし、そして発言し、去っていく。
確かにうるさいが、でも言葉の選択が面白くて、僕はコーヒーを飲みながら、ずっと観察していた。

「君、そうだ君だ!いいピアスだね。オカマみたいだ」
「おっとネクタイが曲がってる。そんなんじゃ結婚式も台無しだ!二次会?…それじゃまあ、いいか」
「ちょっと待った。あんた疲れてるな。うん疲れてる。よしスタバに行け。混んだ店でお洒落なラテを飲めば元気になるさ。それで駄目なら田舎者ってこった」
「高校生!そのマフラーは隣の彼女からのプレゼント?違う?じゃあ別の彼女?うん、いいんじゃないかな、俺は無理だけど」


昔の「木曜洋画劇場」や「金曜ロードショー」に出てくるエディ・マーフィを思い出させる(もちろん吹き替え版)。
どうしてああもぽんぽんと指摘事項が出てくるのか、不思議になる。鬼才というか、大道芸人としても活躍できそうな能力である。30分くらい、かなりのハイペースで頑張っていた。

観察している限りでは、その「指摘」を受けても、誰も怒りはしていなかった。
結婚披露宴帰りの男性達は「うえーい」と盛り上がっていたが、それ以外はほぼ、無視。嫌だから無視、というよりは、ただもう「街の風景」として、ほとんど気にしていないように振る舞う。

 

僕は毎週のように静岡市の中心街に行くが、でも彼女を見たのは初めてだと思う。
以前は、大日本帝国海軍の礼服を着込んだ老人や、「麻の葉を象った自動車用芳香剤」をTシャツに沢山ぶらさげた青年をよく見かけた。彼らは何処に行ってしまったのだろうか。

 


静岡市、日常の買い物には概ね不自由しないが(欲しい物の70%は手に入る)、もう少し「都会」でも、罰は当たらないと思う。つまり「ガガーリン」は、映画館で観たい。
一応、ミニシアターもある。でも「上映した頃には、既にレンタルショップにDVDが並んでいる」のは、少しつまらない。もちろん、待っていても上映しない作品は数多い。

映画館と美術館、それにカフェ(の数と質)に関しては、都会がとても羨ましい。個性的な古本屋は最近増えてきて、嬉しい限り。本屋も、もう少し頑張って欲しい。

それと「徳川家康が一時期、首都(幕府?)と定めた割には、キャラが弱い」と思う。京都奈良とはいかないまでも、金沢や仙台のような「歴史の香り」に欠けるのは、どうしてだろう。

 

 

静岡百景

 ところでこの「ポケットに静岡百景」は、文庫版になって魅力が増したと思う。ビニールカバーの装丁も懐かしい。丁寧に作られたのだな、と思わせる内容充実の1冊。これ、県外では売れているのだろうか。

ポケットに静岡百景

ポケットに静岡百景

 

 

静岡百景

静岡百景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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