ありがとう資生堂アートハウス

 

掛川市の「資生堂アートハウス」へ行ってきた。
この美術館は、今月の後半に閉館する。今日は偶然に県西部へ行く用事があって、これが最後の機会と立ち寄ることにした。

 

本当に素敵な場所だ。
展示品は国内の工芸品や明治以降の日本画や油絵など。資生堂という会社が集めてきたもの、文化活動として進めてきたものが大半。

 

今やっている特別展も、資生堂のロゴタイプなどに関わった美術家の小村雪岱氏の作品展と、この美術館が続けてきた活動「工藝を我らに」の2026年コレクション展。

 

前者は、資生堂の初期デザインから戦前〜戦後の装幀、挿絵に油絵と様々な収蔵品がどっさり並んでいて見応えがある。

先に閉館してしまった、隣接する企業資料館*1にも氏の展示や作品があった。当時の最先端だったのだと改めて実感する。

自分は本の装幀のすばらしさが印象に残っている。特に見返しに凝った絵や柄を配する工夫は、今の書籍でも真似して欲しいもの。

 

 

「工藝を我らに」は、古いものから現代作家まで、様々な工芸作品のコレクションを使った企画展であり、この資生堂アートハウスの定番というか名物企画。
日々の生活に、最高峰の漆器や陶磁器といった工芸品を合わせて展示するのが特徴で、正月や節句、お茶の席などのシチュエーションに合わせた組み合わせを楽しませてくれる。

特に好んでこの企画展を観に行くことはなかったのだが、ぶらりと立ち寄ってみると偶然に出くわすことが多い「工藝を我らに」展である。正直なところ自分には興味の薄いジャンル、だけどいつも楽ませてくれる。
わかりやすく、趣味が良く、豊かな気分になるのだ。こういう企画は珍しい。

 

じっくりと時間をかけて、建物全体を楽しむつもりで歩いた。
足跡が残る絨毯の床も、綺麗な庭も、リ・ウーファンの立体も、不思議な間取りも、今日でお別れ。

 

こういう、自分では全くどうにもならない、そして気が向いた時にだけ行っていた程度の「お気に入りの場所」が失われてしまう時は、独特の寂しさがある。
ただ静かに、すうっと寂しさが身体に留まるだけ。その静謐ともいえる寂しさは、その場所にいる時も、帰ってからも、しばらく続く。
夜になっても、お腹の中にすうっとした感じが残っているような気がしている。

資生堂アートハウスや企業資料館のものは、銀座のそれに集約されるのだという。
銀座は遠い。ふと思いついて、気まぐれに行く場所ではなくなってしまった。

 

 

まだ何度でも行きたかったし、この場所に連れていきたい県外の友人知人もいた。
本当に残念。だけど、今までありがとうとお礼を言いたい。
地方に住んでいると、こういうタイプの「洗練」は、なかなか体感できないのだ。
唯一無二の場所だった。

 

お題「わたしの宝物」

*1:ここも素晴らしい場所だった…。

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