映画『ボイリング・ポイント/沸騰』

家族の入院に関する諸々のために静岡市の中心街へ行き、自由になったのが夕方。
見たかった映画にちょうど間に合ったので、気分転換も兼ねて鑑賞してきた。

といっても、楽しい気分になれる作品ではなかった。
タイトルは『ボイリング・ポイント/沸騰』。原題は『Boiling Point』だから、『沸点』となる。

予告編はこちら。


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紹介は劇場「シネ・ギャラリー」のブログから引用する。

ロンドンの高級レストラン。妻と別居し、さまざまなことに忙殺されるオーナーシェフのアンディは開店直前の店に出勤してきた。クリスマス前の金曜日、予約はオーバーブッキング気味で、食材の発注忘れや衛生管理士の検査なども重なり、殺気立つ雰囲気のなか店が開店する。次々と出現するトラブルにアンディやスタッフたちのイライラが次第に沸点に近づく・・・

なんとこの映画、ワンカットで全編がつながっている。
おいしそうな料理や気の利いた会話も多少は出てくるが、基本的にはトラブルの連続。接客業の経験がある人だけでなく、仕事で修羅場の経験がある人、仕事のトラブルに私生活のそれがどんどん重なった経験のある人にとっても、見ていて辛くなるシーンが続く。僕も見ていて胃のあたりが気持ち悪くなってしまった。
ただし、欧米の高級レストラン*1というクッションがあるから、ただ酷い状況を体感するだけでなく、ワンクッション置いた視点で楽しめる。

とはいえ、いちばん忙しい時に電話は鳴るし、評論家は来店するし、阿呆な客が面倒な注文をするし、最初から最後までしっちゃかめっちゃかである。それが1台のカメラで延々と続く。この先、この店はどうなってしまうのだろうと目が離せなくなる。

ワンカットの映画は色々と見たけれど、いちばん上手に活用している作品だと思う。
スタッフロールの後まで気が抜けない作品だった。
集中させて余計なことを考えさせないことが良い映画の条件の1つなら、この作品は傑作と言っていい。

しかしやはり、疲れる映画でもある。
他人の喧嘩を90分ほど見ているようなものだから。だから、映画館を出たあとに「良い映画だなあ。でも、しばらくは見ない」と心に誓ったのだった。
さらに言うと、可能ならば映画館での鑑賞が向いている作品だとも思った。できるだけ没入したほうが楽しめる作品だから。
そういう意味では、映画館で見ることができて本当に良かった。

ストレス解消のつもりで見たら、えらい目にあってしまった。夕食を軽くしたくらいには、心身が疲れた。
でも後悔はしていない。良い映画だった。

 

 

お題「ささやかな幸せ」

 

*1:バーがあってワインリストがあって、席には担当するスタッフがいて、客がスタッフ達と賑やかにおしゃべりするタイプの高級レストラン。

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