今、映画館でスタジオジブリ*1の特集をやっている。新作映画の公開が滞っていて、それなら過去の名作をと企画されたもの。
ナウシカについては、子供の頃から何度もテレビで見ている。
劇場では見たことがない。
DVDやレンタルビデオでも見ている。
つまり、スクリーンで見るのは、今回が初めて。
全てのシーンに見覚えがある。台詞だってシナリオだって、だいたい記憶にある。
僕の年代の日本人の多くは、人生と共に見続けてきた作品だと思う。
自分は、映画も漫画も大好きだ。
だから楽しめることはわかっていた。
でも、新しい体験ができるとは思っていなかった。
だってナウシカである。
まさか最後の「その者、青き衣を纏いて 金色の野に降り立つべし」のシーンで、大ババ様と同じくらいに涙を堪えることになるなんて思いもしなかった。
映画館の魔力だ。
自宅では、よほど集中できる環境でなければこんな感動はしなかったと思う。
びっくりした。
そういう心の動き(乱れ?)とは別に、色々と気づいたこともある。
例えば
- 前半は説明台詞が多い。
- 登場人物は、思っていることを語らない。
- ナウシカが行動すると、周りの人が納得して動く。このときも基本、語らない。
- 短い説明台詞と、行動する登場人物のおかげで、物語はすぱすぱと気持ちよく進む。
- でも時間をかけるところは贅沢に使う。
風の谷のちびっ子達とナウシカのやりとり等、地味だが丁寧。 - 最後のクライマックス・シーンは意外と短い*3。
- 技術的に、今ならばもっと緻密に、あるいは立体的にできそうな部分は多い。腐海や雲の表現など。もちろん、当時の表現・技術で十分に圧倒されるシーンも多い。
- クロトワさんが「タヌキ」呼ばわりされていた。タヌキが現存するのか、タヌキなる蟲がいるのか、あるいは中世ファンタジー世界における「ジャガイモ」のようなものか。
- いかにも「電子音楽」って音楽が唐突に流れる。飛行機械でのチェイスシーンなど。時代を感じるテケテケピコピコギョイーンって音楽が流れて面白い。
- エンドロールがおそろしく短い。
声優なんて「風の谷」「ペジテ」といった勢力ごとの括り。静止画でエピローグを入れながら、主題歌1曲で終わらせてしまう。最近のハリウッド映画なんてテーマソングの後にラップ入りポップソングをフルで入れて、その後に続編を匂わす映像が流れるのに。 - 大画面で見て、はじめて知る伏線。
画面の隅に描かれた設備が後できちんと役立つなど、「子供の頃から何度も見ているから」と思い込んでいても知らない事は多い。 - ジブリグッズでは常連のキツネリス「テト」が、あんまり可愛くない。可愛く描いていない。昨今の「1作品に1マスコットキャラクター」が定着していない時代の映画だ。
さすがに古い作品なので、気になるところはたくさんある。でもそれも、時代の違いが気になるというだけ。つまりもう古典なのだ。「風の歌を聴け」や「坊っちゃん」と同じ。
「風の谷のナウシカ」に限っては、リメイクもディレクターズカットも、そしてリマスターも要らない。これはこれで素晴らしいし、もう二度と作れない映画だと思う。
こうして映画館で観て、こんなにも好きだったのかと自分に驚いている。
たぶん今年の(私的)ランキングベスト10に入る作品だ。
もしかしたら、人生ベスト映画ランキングにもノミネートされるかもしれない*4。
良い時間でした。
今なんとなく映画館は避けているけれど、行けて良かった。