バター塩ラーメン

入院中の家族に着替え等を届けてきた。
休日の大病院は、とても空いている。薄暗い病院内をぐるぐる巡って(なにしろ棟がたくさんある)いくつかのエレベーターを乗り継ぎ、最上階の隅にある入院エリアへたどり着く。
ここは隔離病棟になっていて、着替えや頼まれた本などは直接渡せない。窓口で看護師さんを呼び出して、預けることになる。フロア全体が面会謝絶なのだ。

だから、人とほとんど顔を合わせることもなく、人混みもなく、特に気を使うこともないのだが、それでも疲れてしまうのはなぜだろう。
大病院に行くだけで、体力を消耗してしまう。

 

 

 

帰路、街角で知人と会った。
マスク越しに「疲れている顔をしている」と言われてしまった。
「カロリーのあるものを食べよ。そして眠れ」とアドバイスされた。

カロリーのあるもの、なんてアドバイスは珍しいし面白い。
折りたたみ自転車で駐車場に戻る途中に、昔から気になっていた店があったので、昼食に入ることにした。

 

店の名前は「川しん」。夜中まで営業していて、夜遊びをする人には有名なラーメン屋らしい。
裏口みたいな汚いところが表玄関で、小さなカウンターと小さなテーブル、そして店主ひとりで切り盛りしている。

静岡市に点在する「味噌のかたまりを溶きながら食べる味噌ラーメン」を扱う店。なぜかカレーもおいしいと聞く。
大昔、誰かのエッセイで、この店の塩ラーメン(バター入)のことを読んだ。
そうだカロリーだ、動物性油脂とラーメンの組み合わせは、たくさんのカロリー(熱量)を得ることができるじゃないか…と考えて、バター塩ラーメンを注文した。

器は平たくて大きい。
豚骨ラーメン用の細い麺を生麺にしたような麺と、塩辛いがあっさりしたスープ。コーンは多め。麺も多め。
ここに10g以上15g以下くらいのバターが乗っている。

バター入りの塩ラーメンなんて久しぶりに食べた。
子供の頃に「札幌ラーメン時計台」というチェーン店で食べた記憶がある。当時、袋麺のCMでも、札幌ラーメンといえば四角いバターが乗っていて、印象に残っていたのだ。家ではバターの塊を乗せるようなことはしない。子供というのは、そういった小さな違いに憧れるものなのだ。

そしてこのバター塩ラーメン(塩バターラーメン?)だが、なかなかおいしかった。
お酒を飲む人なら、飲んだ後にちょっと歩いて*1、塩の強いラーメンを食べたくなるかもしれない。僕は酒を飲まないから、よくわからないけれども、そんな気がする。

綺麗でも新しくもないお店だったが、雰囲気はとても良かった。
老若男女、それぞれが静かに麺をすすっている。中心街からは歩いてすぐだけれど、わざわざ目指して来る人が大半なのだと思う。

そういえば「マーボーラーメン」も有名らしい。
「俺は、ここではマーボーラーメンとカレー(小)しか頼まない。マーボー部分をカレーのライス部分にかけるのが、この店の最強メニューだ!」と力説して、あろうことか連れの女性の分まで同じものを注文している青年がいた。
女性は「信じられないです」と静かに怒っていた。「お試しのデートで穴場だと連れて来られて、勝手に注文ですか。信じられない」と。
気持ちは、よくわかる。
僕だったら、せっかく繊細なワンピースを来てランチに待ち合わせしたのに、こんなテーブルのぺたぺたした店に連れてこられて、しかも勝手に注文されたら泣いてしまうかもしれない。「お試しデート失敗事例集」に乗せるべきケースだと思う。
店主氏も「そりゃあ兄ちゃんが悪い。好きなものを頼みなよ。ぜんぶおいしいからね」と言っていた。
まるでグルメ漫画みたいな出来事だった。でも漫画だと、この後に何かしらの(思いがけない)変化がある。彼らのお試しデートに、そういうものが発生するのだとしたら、それは奇跡かもしれない。

でも僕には全く関係のないことだ。

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とりあえず(アドバイスに従い)カロリーのあるラーメンを食べ、帰宅してからぐっすりと寝たら、それなりに元気を取り戻した。ただし肩こりは酷い。
この数日で、いささか緊張が続いていたのだろう。

明日は100%予定が無い日。
今日だって忙しくはなかったが、明日はもう徹底的に何もしないつもりだ。

 

お題「わたしの癒やし」

 

*1:繁華街からは少し歩く

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