映画「リトル・ジョー」

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映画「リトル・ジョー」を見てきた。



映画の説明は、静岡シネ・ギャラリーの文章がわかりやすい。引用する。

シングルマザーの研究者アリス(エミリー・ビーチャム)は、幸せになる香りのする新種の植物リトル・ジョーを開発するが、仕事にのめり込むあまり息子のジョーと向き合っていないことに後ろめたさを感じていた。ある日アリスは、リトル・ジョーを植えた鉢を持ち帰り息子にプレゼントする。しかし、花の香りをかいだジョーや、花粉を吸い込んだアリスの助手クリス(ベン・ウィショー)の様子が徐々におかしくなる。

SF風味のサイコサスペンスといったところか。
なぜか劇中の音楽が和風。篳篥や笛を駆使した現代音楽なのだが、どこか「外国の映画で描かれたJAPAN」な雰囲気がある。始めは面食らったし、「これから怖いことがはじまるぞ」という場面では必ずこの和風な曲が流れるため、Ninjaでも出てくるのではないかと気になってしまった。

とはいえ、映画は最初から最後まで真面目に進行する。
クリーンな建物と端正でモダンな生活。研究所のパステルカラー主体の色合いもかわいい。

主人公の周辺の人達がどんどんおかしくなっていくストーリー。
ただし、警察も特殊部隊も軍隊も出てこない。あくまで研究所とその関係者が、普通の生活を続けながら、少しずつ変わっていく。おかしな人がまともな事を言い出したり、最も客観的で正確な判断ができる精神科医が(そのまともさ故に)考え違いをしたりと、様々な要素が、ほんの少しずつ変化していくところはじわりと怖い。

SFと考えると、科学要素は100点満点で40点。
サイコサスペンスではあるが、精神医学や心理学を齧った人からしたら笑ってしまいそうな嘘くささもある。35点。
主人公たちは阿呆ではないし偶然の要素も少ないが、もう少し賢く振舞えないのかと思う場面も少しあった。50点。

でも、不思議と惹き込まれる作品だった。
新種の植物がもたらす、おそろしい出来事ではあるのだけれど、上述の通り「世界と人類の危機」は描かれない。むしろ関わった人達の多くは、幸せになったようにさえ見える。ただし何も解決しないまま映画は終わる。

こういう味わいは…と記憶を辿ると、荒木飛呂彦の短編マンガが一番近い。
連載の「JoJoの奇妙な冒険」とは違い、短編集では「ちょっとおかしな、決定的に現実からズレた、奇妙な味わいの非日常トラブル」が多く描かれる。
現代日本SF小説だと、こういうじめっとした短編は少ない気がする。「いろいろあって人類は滅びました!」くらいのからりとした方向に飛び抜けて、ようやくSFとなるのが今の時代だ。ホラーでも「因果応報も問題解決もなく、ただ”現象”が広まっていく嫌な感じ」だけで終わる短編は知らない。

 

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万人向けではない、と思う。
人によっては「地味だ。カタルシスに欠ける。わけわからん」と不満に思うかもしれない*1
しかし僕には、十分に面白かった。
奇妙な味わいの作品。狙って出会えるタイプの映画ではない。
見るのなら映画館が一番だが、家ならば夜中に、落ち着いた気持ちで鑑賞すると良いだろう。ナイフでぐさり、といった暴力や痛い表現はほとんど無いので、そういうのが苦手な人にもおすすめ。
それと、役者の演技、表情が細やかで印象に残っている。キャストに興味があるのなら、とりあえず見て損はないはず。

 

 

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さて寝ます。夕方は、西の空は雨と雷が、北は真っ暗な雲が、そして東には月が見えるという、よくわからない天気となっていた。今は豪雨。たぶん通り雨。雷もがんがん落ちている。
こういう日は寝るに限る。おやすみなさい。

 

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お題「ささやかな幸せ」

*1:だいたい予告を見たら、好みかどうかわかるだろう。