職場の人に、「知り合いの知り合いがやっている酵素ドリンク教室」についてのお話を聞いた。チラシ付きで。
教えてくれた人も、面白半分での体験談だったから良かったものの、聞いていて辛いくらいに気になる点が多々あった。もちろん全部は質問しないけれど、でも似非科学にしてもこれは酷いと思う。
例えば酵素と酵母を混同しているし(酵素が自己増殖したら世紀の大発見である)、今時「北半球と南半球では、洗面所の渦が逆になる」というエピソードが出てくるし(コリオリの力の話、子供の頃からよく聞くし、海外旅行の際に逆回転の渦を確認した人も多いけれど、きちんと比較した人は皆無だったという有名なエピソードはどうやら知られていないらしい)、それを地球磁場と絡めて「ありがとう」と声をかけると良い水になるとか言っているし、結局のところミネラル水なるものを売りつけるし、なんだかとても無茶苦茶だった。
科学の言葉を使うにしろ、もう少し下調べをしたらどうだろう。ゴジラ映画だって、このセミナーよりはリアル感がある。
「そうか多くの人は、酵素を経口摂取しても有効だと、この平成の時代にも思っているのか」と最初は思った。
しかしもちろん、そんな思い込みは同僚だってしていない。ただ単に、「そういう事は気にしない」のだ。
酵素を口から摂取して身体に影響するのだとしたら、刺身やサラダを食べるだけでとんでもない事態になりそうなものだ。その辺りの整合性を気にする人ばかりではない、ということ。
確かに、セミナーのお話を要約してくれているのだが、「AはBのためにCである」という話のBの部分が、ずいぶんいいかげんなのだ。だから「BならばDはEになるはず。でも日常ではそんなことはないよね?」と質問しても、「さあ、よくわからないけれど、Cって言っていたから」で済んでしまう。「メカニズム」には興味が無いのだ。
それよりも有効なのは、「そのセミナーは、ある新興宗教の”商売”そっくりだよね」みたいな話。でも残念ながら、最近の「ブログでじわじわ広まっている地元密着型の(多くは女性の)副業的なナチュラルでスピリチュアルな集まり」は、かなり自主的な創作が多い。場合によっては最後に登場するナントカ・ウォーターすら手作りで、バックに腹黒い悪徳企業がついている訳では無い場合すらある。だから料金も廉価で、ある意味では「味噌造りのサークル」と変わらない。
でもやはりこれは間違っていると思う。自らの信じるストーリーを語るのならば、まずはそれが創作であることを宣言すべきだ。それが誠意というものだ。酵素とか波動といった、科学の言葉の威光を借りて真実味を増すなんて、嘘を言っているのと同じなのだから。
最近は、エクストリームなナチュラル系がよく話題になる。ジャムの空き瓶(洗っていない)で作る豆乳ヨーグルトとか。でもこういう、ふんわり仲間内だけで広まる似非科学も怖い。
しかしこういうセミナーのチラシ、どうして「細い黒ペンにクーピーか色鉛筆で色付けした、あまり上手ではないイラスト」が添えられているのだろう。そして、主催者の名前が大仰なのはなぜだろう。
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