うるう秒

今の勤め先は、いわゆる理系であり、主な業務は科学の実験となっている。研究する人達と、その手足となって動く人(僕はこの役割)と、分析などを行う人が混ざって働いている。

もちろん誰もがカリカリの理系という訳ではなくて、休憩時間には血液型性格判断や怪談といった、非科学的な話もする(ケーキの話もする)。
負けることが統計的に判っているギャンブルに邁進する人もいるし、厄年にお祓いを受ける人だっている。つまりは、普通の人間が働く、一般的な会社だ。

でも研究者のなかには、そういう“あまり科学的ではないネタ”を聞き流すのに苦労している人もいる。マイナスイオンとか、デトックスといった話が聞こえてくると、耳がぴくぴくする人がいて、これは気の毒としか言いようがないけれど、面白い。太いフレームの眼鏡をかけているため、耳の動きが観察しやすいのだ。

さて、今日は「閏秒」の日だった。
つまり「午前8時59分60秒」がある日なのだ。

この閏秒について、昼休みにこんな声が聞こえてきた。
「ねえねえ閏秒って今日だよね」
「うん。でも何にもわからなかった」
「私もー。全然気づかなかったー」
「本当にあっただかしん?」
この時、僕は上記の研究者とごはんを食べていた。
もちろん耳(と眼鏡)は、ぴくぴくと動いていた。ちなみに「だかしん」とは「〜のだろうか?」という意味合いである。
とりあえずピースサインを示し、同情と共感の意を示した。こういう細かい積み重ねで、僕はとりあえず「理系の側」の人間と見做されている。だから得をするといった事はないし、非科学的な物言いをする人が、僕よりもはるかに仕事ができるのだから、世界は本当に面白いと思う。センス・オブ・ワンダーを感じる。

まあ、閏秒がやってきた時には、僕だって何も体感しなかった。去っていく時も感じられなかった。時間というものは、基本的にラベルやタグがつけられないものなのだろう。
せめて、パソコンの画面を注視して、本当に「60秒」が表示されるのか、あるいは他の処理で済ませるのかくらいは、確認しておきたかったところ。
残念ながら、研究員の手足である自分は、その時間には薬品を量って、温度を調べていた。

 

 

志村貴子イラストワークス (ビームコミックス)

全然関係ないが、今日は画集を買った。
漫画家の画集なんて、買うのは生まれて初めてかもしれない。でも好きな作家さん。素敵な絵がたくさん。分厚くて、ほぼフルカラーで、値段は意外と安い。雑誌みたいな扱いなのだろうか。よくわからないけれど、お得感はある。

 

 

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