てきぱきと「やりたい事」を片付けていった、そんな印象の土曜日だった。
少し前から、ずいぶん暖かくなった。そろそろ自転車に乗っても楽しい季節。真冬にも交通手段として自転車には乗るが、レジャーとしての折りたたみ自転車による散策(?和製英語で言うところのポタリング)は、やはり10℃以上が望ましい。
今日は静岡市清水区の、三保半島をぐるりと周った。
海沿いということもあって、予想したよりも寒い。風景はほんの少し春めいていて、ぽつぽつと咲きはじめた花が綺麗。
映画館で『アメリカン・スナイパー』という映画を観た。
よくできた戦争映画だと思う。本当にあった話を下敷きにして、隅々まで気を配って作られた佳作という印象。
ただ、熱烈に記憶に残る、という作品では無い。少なくとも僕には、そう思えなかった。
湾岸戦争以降のアメリカの戦争を描いた作品は数多く、どれも良くできている。昔の戦争映画のような安っぽさや雑さが良かったとは思わない。多分に僕の側の問題もあるだろう(21世紀の“アメリカの戦争”に興味はあるのだが、映像作品としては似通って見える)。このもやもやっとした気持ちは何なのだろう、と思いつつ映画館を出て、そして今も考えている。
娯楽色が薄いから面白くない、なんて理由だったら困るなあ、なんて思っている。娯楽的な戦争映画はあまり好きではなかった筈。自分で把握していない嗜好の変化に気付くのは、個人的に好ましくないのだ。できればインテリ方面に(そして自覚的に)老化したい、と思っているので。
ところでこの作品、基本的にアメリカ人がアメリカ人に向けて作ったのではないか、と推測している。日本人ならばこんな風には作らないだろう、と思わせる演出や場面が多々あった。そういう異文化感だけでも、観る価値はあった。
夕方、静岡市葵区のカフェ「カプー」にて、最後のおやつを食した。
最後の、というのは明日が閉店日だから。
混んでいるかなと思っておやつには遅い時刻(夕食には早過ぎる)に行ってみたところ、やはり最後を偲ぶ人達が絶えなかった。
精算の際に、店主やスタッフの方々に声をかける人達を眺めながらの、とても感傷的なおやつの時間を過ごした。
思えば色々な人と、様々な理由で訪れ、お茶やコーヒーを飲み、食事をした。12年と少しの歳月は長い。数週間前に「今日がきっと最後だろう」と思って来店した際と同じく、今日もまた走馬灯状態に陥った。
たまたまだろうが、お客さんの多くが「僕と同年代で、幼い子供を連れた、カフェ好きっぽい夫婦」だった事も、この走馬灯を回す原動力(?)になっていた。たぶん彼ら彼女らにとっては、お互いに共有する思い出の店と風景なのだろうな、などと考えていると、時間がどんどん過ぎてしまう。
とはいえ、店主さんはいつも通りに朗らかで、あまり湿っぽい雰囲気ではない。達観、高揚、展望、どのような心境かははかりかねるが、でもその明るさは客の側からすると実に有り難い。実際、まだ姉妹店(藤枝市の山奥にあるカレーカフェ)やイベント出店は有る訳で、完全にカプーが途絶える訳ではない。だから気分としては「今までありがとう。これからもよろしく。またいつか何処かで」となる。
とにかく、最後に少しだけ挨拶ができて、本当に良かった。
お互いに名前も知らない間柄なのに(店主さんは、僕の顔を覚えていたようだ)、店と客それぞれが感謝の言葉を伝え、笑ってお別れを言えたことが、今は嬉しい。
最後に食べたものは、「スコーン(アイスクリーム添え)」。温かい自家製スコーンに、はちみつがかかっていて、アイスが添えてある。
飲み物は、やはり「ネパリティ」にした。夏ならば冷たいジャスミンティにしたと思う。
感傷は別として、美味しい組み合わせだと思う。代替は、無い。