映画『イニシエーション・ラブ』と、シブーストと、ミルクレープの日。

映画『イニシエーション・ラブ』を鑑賞した。
友人と、その姪と行った。
これはなかなか評価が別れる作品だと思う。僕は「料金分は楽しめたが、しかし」という感想。せっかくの「1980年代の恋愛風景」を描いているのに、細かなところで粗があって残念だった。主人公とその周囲の車はきちんと当時の車なのに、対向車が最近の車だったり、そういう部分をいい加減にするのならば、現代のお話に切り替えてもいいような気がしてくる。携帯電話などが普及した時代では成立しないお話ではあるのだが、まるで「おっさん・おばさん誘引用ギミック」の為の80年代に見えてきてしまう。

それから、ポスターにも大きく書かれ、そして映画冒頭でも「この作品には終盤で衝撃の展開があります。映画を観ていない人には秘密にしてください」と述べられる「仕掛け」が、おそろしく雑で、びっくりした。
確か原作本では、もう少し丁寧に作られた仕掛けだったように思える。

ミステリー小説などをある程度読んでいて、例えば「叙述トリック」なんて言葉を知っている人が「この作品には仕掛けがあります」と言われた後に観たのならば、たぶん一発で気付く。ミステリー小説は苦手(好きだが、たまに混乱する)でも、すぐにわかった。

ただこれは、娯楽映画としては良い改変だったのかもしれない、と今になって思う。
これくらいのわかりやすさでないと、たぶん面白みも薄れる。誰もがミステリマニアという訳ではないのだから。それに前述の雑な感じ、細々とした軽い演出、全てが一貫した方針のもとに設計された、この作品の「色」のような気もしてきた。というか原作そのままの仕掛けは、たぶん再現不能だろう。

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 
イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

 

 

つまり、僕の好きなタイプの映画ではないが、でも楽しく観ることができて、これはこれで良かったと思うのだ。「誰もが必ず2回見直す」なんて惹句は誇大広告も甚だしいとは思うが。

この映画、静岡市が舞台となっている。そしてきちんと、静岡市でロケをしている。
だから、よく見知った風景と、何度も行った店と、地名がばんばん登場する。
なかなか新鮮な体験。でも知っている人間としては、やはりこの「映画のために継ぎ接ぎされた静岡市」は、興醒めな部分もある。
例えば主人公がヒロインのところに(一心不乱に)バイクを走らせる場面。まず浅間通り商店街を南進し(お気に入りのcafe Bikiniもちらりと写る)、その次のカットでは浅間通りと並行する御幸通りを北上するのだ。それでは行ったり来たりしているだけだ。
それから、80年代には無かった場所が、頻繁に登場する。確かにあの時代の青葉公園通りは再現できないだろうし、静岡市らしさといえば復元された駿府城の巽櫓かもしれない。でもそれは80年代には無かった、平成の風景なのだ。たぶん静岡市を知らない人でも、「これは昭和後期らしくないな」と思えるのではないか。そういう公共の施設って、多いと思う。
せっかく小道具を凝ったのに、なんだかとても勿体無い。ただこれは、東京や神戸や横浜といった、映画によく使われる都市の人間ならば、頻繁に感じている不整合なのだろう。あまり目くじらを立てずに、そういう創作空間の静岡なのだと考えたほうがいい。

厳しいことを書いたが、でも酷さでいえば、これくらいは日本映画としては序の口だろう(上映前に、夏休み向けの酷い日本映画の予告編を嫌になるくらい見せられた)。
ヒロインは危うくてアンバランスで可愛らしいし、台詞のいくつかは心に引っかかった。娯楽映画らしさが溢れる良作、と言っていいのではないか。

 

 

ところで今日は、昼前にシブーストを、夕方にミルクレープを食べた。

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昼前には「笠井珈琲店」に行った。
チーズケーキを注文したところ、「今日は、金柑のシブーストをお勧めします」と店主が言う。誰か常連と間違えているのか、あるいは本当にシブーストが会心の出来なのかはわからない。ただ少し圧倒されて(そういう事を言われた事は初めてで、そういう事を言う店主ではないので)、「では、お任せします」と言ってしまった。

このシブースト、薦めるだけあってとびきり美味しい。
金柑の酸味と甘みとほろ苦さと、メレンゲやクリームの柔らかい味、焦がした砂糖の風味が良いバランス。シブーストに開眼した、といっても大袈裟ではない、かもしれない。

https://instagram.com/p/33HNDxGMZO/


ところでこの笠井珈琲店静岡市の喫茶文化である「温かいブラックコーヒーと甘いアイスコーヒーを同時に楽しむ」ことができる数少ない店なのだが、1人で2人がけのテーブルに座り、そしてカップとグラスが置かれていると、なんだか「わけあり」な風景になると、今日初めて知った。いつもはカウンター席だから気にならなかったが、今日は近くの席の人達がちらちらとこちらを見ていた。
だれか“今ここにいない人”を偲んでいるのか(お前の好きだったアイスコーヒー。また夏が来るよ…)、それとも単なるコーヒーマニアか(ホットとアイス、どちらも美味しいなあガブガブ)、とにかくちょっとした非日常だ。
でもこのコーヒー&アイスコーヒー、本当に美味しいです。甘くて、濃いクリームの浮いたアイスコーヒーはデザートの立ち位置になるので、本来はケーキは不要なのかもしれない。でも僕は、せっかくだから全部楽しむ。

 

 

 

https://instagram.com/p/33JVQWGMbh/

夕方のミルクレープは、いつもの「マリアサンク」で。

これは紅茶と合わせた。
甘夏を使った豪華なミルクレープだった。甘夏という、さっぱり素朴な果物なのに、きちんとリッチな感じがするのは、この店の持ち味なのだと思う。甘夏味が乳脂肪と合わさって、不思議で面白い味になっていた。
たまにはミルクレープもいいかな、くらいの気分で注文したのだが、食べ終わる頃には大満足という、思いがけない体験となった。

tabelog.com

 

そんなわけで、今日は休日らしく遊び呆けて過ごしている。
今から面倒な諸々を片付ける。その前に、昼間に買った漫画を読みたい。

 

スクール・アーキテクト (1) (まんがタイムKRコミックス)
 

 

 

エシカルンテ(2) (イブニングKC)

エシカルンテ(2) (イブニングKC)

 
エシカルンテ(1) (イブニングKC)

エシカルンテ(1) (イブニングKC)

 

 

 

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