鷹匠に蘇る、「ブーケ」のコーヒー。

かつて、新静岡駅の近くに「ブーケ」というケーキカフェがあった。
鷹匠という町の良い部分を凝縮したような名店で、コーヒーもケーキももちろん美味しかったけれど、混雑していても騒がしくないところが気に入っていた。隣接する小さな神社の緑が良い借景になっていて、桜の季節に行くと、なんだか小説の風景みたいだった事を覚えている。
僕はこの店のガレット・デ・ロワが好きで、たっぷりのコーヒーと共に食すのが新春の恒例となっていた。

しかし「ブーケ」は、もう無い。
もう、ずいぶん前に閉店した。静岡県中部の甘党ネットワークでは、かなりの衝撃を伴って、その情報は拡散していった。
「高齢となった店主が引退するらしい」「寂しいが、それならば仕方がない」「いわゆるハッピーリタイアじゃないか、浮き沈みの激しい飲食店界隈では実に喜ばしいことだ」「しかしこれで、またひとつ名店が消えた。時代の流れを感じる」「これから、どうすればいいのだ」
そんな会話が飛び交っていた。あの閉店は、静岡県中部の“カフェ・スイーツ・シーン”における、ひとつのピリオドだったと思う。

 

しばらく経ってから、その「ブーケ」が復活するという情報を様々な場で耳にするようになった。そして実際に、「ブーケ」は、「Sud Bouquet」として、形を変えて復活したのだ。

新しいブーケは、その名の通り、市の東側に現れた。中心街ではなくて、歩いていけるような場所ではない。明るくて居心地の良い一軒家を改造したカフェ。メニューも少し変わって、キッシュやパンが加わった。
確か、「旧ブーケのスタッフか家族か、とにかく親しい人達が、老主人の志を継いだ」と聞いた。什器や飾りものに、昔の店のものがあった。そして何より、あの老店主が、昔のようにコーヒーを挽いて、淹れていた。

朝から開いていて、駐車場があってと、とても使いやすい店だった。自分のいつも使う道にほど近いところも気に入っていたし、もちろんケーキもコーヒーも美味しい。

末永く続いて欲しいと願っていたが、その「Sud Bouquet」は、今年の夏頃に、店を閉めてしまった。閉店の理由はわからない。
噂だけがインターネットで伝わる。不確定情報の最後には「これから、どうすればいい」と嘆きが添えられる。厳しい時代だ。

 

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つい先日、かつての「ブーケ」のあった場所、鷹匠のあの建物の2階に、喫茶店がオープンすることを知った。店名はブーケでは無いけれど、しかし場所が場所である。気になる。

というわけで、今日の午前中に、行ってきた。

店はカウンター(6席くらい)と、テーブルが4つ。部屋の半分がオープンキッチンになっている。かつて2階全体が喫茶スペースだったことを考えると、こぢんまりした規模で、その代わりに全体にゆったりしている。窓と、そこから見える風景は、ブーケと同じ。

そしてなんと、店主は、あの老店主だった。
席につくと同時にコーヒー豆をごりごりと挽きはじめ、「まだメニューが無い。というか、コーヒーしか無い」ことを告げる。しばらく待って、コーヒー(量は多め)が目の前に置かれる。
確かに、ブーケのコーヒーだった。最初の酸味も、その後の穏やかな味も、たぶん変わっていない(気のせいかもしれない)。
オーブンが試運転中らしく、まだ試作品だというケーキをいただいた。金柑のケーキも、バナナタルトも実に美味しい。近いうちに、きちんとメニューも整備されると思う。

たぶん、小さな規模で、好き勝手に珈琲店を続けたいのだと推測している。
全然、ハッピーリタイアでは無い。この人は何歳で、いつまでコーヒーを淹れ続けるのだろうか。こういうのが天職というのかなあ、などと考えてしまった。

この店の名前は、「笠井珈琲店」という。
今のところ、水曜定休で、10時から18時まで営業する。場所は新静岡駅から徒歩数分、あのブーケがあった建物の、2階。
美味しいケーキと、素晴らしいコーヒーと、たぶん春には桜が楽しめます。

 

 

 

 

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ところで今日は、午後にもしっかり甘いものを食べた。

いつもの「マリアサンク」で、ダブルチーズケーキと、ミルクティーの組み合わせ。
ダブルチーズケーキは、ベイクドチーズケーキの上に、レアチーズケーキが重なった、ボリュームのある品。マリアサンクの看板スイーツ(のような気がする)。
作りも量も欲張りだが、しかしきっちり上品なのは、さすがだと思う。贅沢が過ぎるので、明日からは節制するつもり。

 

 全然関係ないが、今日買った漫画。絵柄がすっきりして、全体に甘酸っぱく、ほんのり黒田硫黄の雰囲気を感じる。気に入ったから、下巻も買う。

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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