言葉の壁

朝早く起きて、手持ち無沙汰だったのでカレーを作った。玉葱とじゃが芋を大量に入れて、水の代わりに野菜ジュースを使う。少し辛めに出来上がった。朝食は磯辺焼きと白菜の浅漬け。カレーは食べない。

 

洗濯物も済ませて、休日の予定を考えていたら職場からの呼び出し電話。トラブル発生、との報告だったので(不本意ながら)駆けつけた。休日と言っても準待機扱いの日だったので、重大なトラブルの際は出社する規定になっている。呼び出し命令は独身の寮生活者から優先的にされるので、年に何回かはこうした事がある。その分の手当ては貰っているが、楽しいことではない。

 

 

 

職場に着いてみたら、機械のトラブルではなくて、パートさん達の喧嘩で運転が止まっていた。古株のパートさん達が、かなり強い口調で新人さんに何か言っている。言いたいことは概ね判るが、細部が理解できない。

 

四日市に住んでもうすぐ2年経つが、時おり方言が判別出来ない時がある。静岡に帰省して喋っていると、三重の言葉が移っているのを実感するのだが、聞き取り能力はまだ不完全だ。特に女性、そして喧嘩腰で話している際が苦手だ。そんな時こそ細部が重要になるのだが、聞き返す訳にもいかず、仕方なく全体の文脈から判断することが多い。“ささって”という言葉など、明日の翌日であったり、明後日の翌日を指していたりと人によって違っていて困ってしまう(三重県人は混乱しないのだろうか)。語尾の変化も複雑で(“~やん”“~なん”等)、承認なのか確認なのか、それとも感嘆を表すのか判らない。

静岡弁、という方言を自覚したのが高校時代に県外出身の教師に出会ってからで、他地方の方言を日常的に聞いたのが大学生だった事を考えると、あまり他所に住んだことのない彼らが方言に無頓着なのは仕方が無いことだと思う。でも、感情的になっているとはいえ、僕に対して自分の言い分を伝える時には、もう少し配慮してもらいたかった。おかげで、何度も細かいことを聞き返すことになってしまった。その度に、発言者(とその賛同者)にじろりと睨まれるのは、なかなか辛かった。特に年配者は、嫌いな人に対して物凄く侮蔑的な単語(恐らくは差別用語、知らない言葉だが凄みは伝わってきた)を連発するので疲れてしまう。

方言の他にも、工場独特の用語が普通に使われているのにも困ってしまう。特に中京から関西にかけての工業地帯では常識らしいのだが(確かに静岡では全く聞かなかった)、“MTG”や“OoA”、“KY”等々、略称が多すぎる。略語も結構だが、本来の意味を知らずに言っている場合もあるので始末が悪い。“被害者感情”という単語を単体で使う場合は、“被害者の気持ちになって考えなければいけない”という意味だそうだ(『被害者感情』と書かれた垂れ幕が会議室に掛かっている)。

さらに、今の職場の場合、他所の工場(同じコンビナート内の他会社、主に石油化学関係)から来た人に対しては「ご安全に!」と言うことになっている。複雑なことに、食品や医薬品関連の来場者の場合は「こんにちは」と言う。機械整備を請け負う下請け会社の人達と仕事を始める時は「今日も一日無事故でっ!」と掛け声をかける。用語はその都度聞けば良いのだけれど、挨拶は瞬時に相手の所属を判別する必要があるので難しい。僕の場合は出向者ということで、この辺の技術はあまり求められないが、新入社員等は判定を間違えると後で注意されるようだ。

静岡の職場では、日系ブラジル人やアルゼンチン人、東欧人も多く働いていて、もちろん激しい言葉のやりとりもあったのだが、何故かその時は何を言いたいのかが良く伝わってきた。もちろん、言葉の面では三重の方言よりも意味不明なのだが、ジェスチャーを交えて(お互い自国語で)言い合えば、大抵の事は伝えられた。不思議な事に、かなり具体的な数字なども間違いなく伝達できていた。

 

 

パートさん達の話を聞いて、喧嘩の決着と上司への報告を纏めていたら昼になっていた。別の日に休暇を貰うことにして、今日一日は仕事をする。こういう日はパートさん達もミスが多くて危ない。夕方から社員が体調不良で帰宅したり、他の仕事に関わっていたら、深夜まで帰れなくなってしまった。

疲れて眠い。空腹なので、牛乳を飲んでから眠る。結局カレーは食べなかった。

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