廃棄物の隠し場所と、肉すいの謎。

仕事はできるがルールはなかなか守れない、ちょっと癖のあるベテラン社員さんは、特にゴミの分別を苦手としている。使用済みのボタン電池などをポケットに入れたまま仕事を終えて、たいていロッカーの後ろとか、自動販売機コーナーの物陰に置いていく。一緒に働いているうちに「捨て場所」の見当がつくようになってしまった。
「たぶんこの辺りに…ほらありました。こういう隙間には金属片を貯めこむ習性があるんですねー」という感じで、これでは動物行動学の先生(フィールドワーク大好き)みたいだ。
ここまで徹底して「隠し捨て」をするのなら、そして概ね捨てる場所毎に分別ができているのならば、そこに専用のゴミ入れを設置すればいいのに、と思ってしまう。容器を用意し、申請し、定期的にチェックするだけ。動線に沿う、最適化された廃棄物回収ルートが完成する。
今だって「隠し場所」を把握している、あるいは推測できる人員が、仕事の合間にそれらのゴミを回収しているのだ。あるいは掃除の際に「こんなところに小さなネジが捨ててある。きっと昭和の遺物だろう」という風に、誰かが拾い上げ、指定された場所に持っていく。大きな企業の大きな事業所だが、数度の大リストラと組織改変があったせいもあって、もう「誰が関わったのか不明な、謎の備品や部品や道具」に関しては誰もが慣れてしまっている。


さすがに、本当に危ないものはルールに従って捨てている、と思う。その辺の良識はある人なのに、なぜか「ルール」となると反発する。特に「エコ」や「ISO準拠」なんて言葉が付いてくると駄目だ。難儀な人である。

これだけ厄介な性癖の人なのに、あまり表立っては注意されない。
決して嫌いな人ではない。朗らかで面倒見が良くて、楽な仕事でも手を抜かない。
でも(あるいは“だからこそ”)この人のそういう暗黒面を日常業務で見ていると、ではなぜこの人がこれだけの(微妙な)特権を持っているのか、とても気になってしまうのも確かだ。普通は馘首になってもおかしくない、というか同じ事を僕がやったらたぶん始末書では済まないと思う。
仕事はできる、と僕だって思うし、周囲からもそう評されているが、それだってルール違反を帳消しにできるほどではない気がする。
強烈なキャラクターと欠点を抱えた人間が、何か大きなトラブルの際には唯一の対抗手段となる、なんて漫画的展開がいずれ訪れるのだろうか。その際に、各所に配置された廃電池や使用済みポストイットや書けないボールペンが有効に働くとしたら、格好良いと思う。そうなったら僕としては「おやっさん、あんたまさかこれを計算して?!」と言わなければならないだろう。新人の務めとして(そして有るはずのボタン電池が片付けられていて窮地に陥るおやっさん!)。

それはそうと、今日は「肉すい」を食べた。
社員食堂の特別メニュー。何らかのトラブルにより、肉うどんが肉すいに変更されたと貼り紙には書かれていた。たぶんウドンに関わるトラブルなのだろう、と推測。前述の「おやっさん」は、社員食堂では基本的にうどんしか選ばない人で、だから今日は少し不満そう。文句を言いながら、でもカレーとサラダとスムージーを食べていたから、たまには良い気分転換になったのではないか。
僕にとっては、たぶん生まれて初めての、肉すいだった。なかなか美味しい。しかしこれ、主菜ではないし、スープにしては量が多く、なんだか良くわからない類の食べ物だと思う。社員食堂の昼食としては異色の存在。本場では、もう少し量が少ないのかもしれない。今日は(肉うどんの代替だったからか)麺類用の丼になみなみと入っていた。

 

 

 

 

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