映画『独裁者と小さな孫』


映画『独裁者と小さな孫』を観てきた。

総合小説、というジャンルがある。分厚くて、登場人物が多くて、人生から世界まで、ひたすら詰め込むような文学作品。僕はあまり読まないが、この映画はそういうものに近い気がする。つまり、「ひとことでは言えない」。

いや、登場人物は少ないし、主人公の2人(独裁者の老爺と幼い孫)にだけ焦点が当てられ、劇中の経過時間だって数日間だ。トリックもギミックも無い、シンプルなストーリー。

でもやっぱり、感想は語りづらい。
革命で追われる身となった冷酷な老境の独裁者が孫を連れて隠れ逃げ、その道中で色々な境遇の人達に会う。そういうお話なのだが、そこではあまりハートフルストーリーは展開しないし、後半にはもう目を覆うばかりの惨状が続く。地獄巡りだ。
ラストシーン直前、政治犯だった男の理性的な言葉でさえ、僕には単純な希望には思えないのだ。
彼らがどうなったのか、はっきりとは描かれていない。ただ僕としては、あの幼い孫だけは、生き続けて欲しいと願う。全てが手遅れだとしても、まず子供は生きる、それこそが希望だ。

中央アジア(例えばグルジアとか)や東欧や、あるいは南米のような、ものすごく貧乏なのに首都の公共建築だけが大仰で、集合住宅がびっしり建っていて、郊外は荒れ地という、いかにも独裁国家らしい風景は、見応え十分。音楽も素晴らしい。

「胸に刺さる映画」というと、陳腐に過ぎるだろうか。
見終わったあとに、劇場のそこかしこから特大のため息が。僕もまた深いため息と、その後は考え込むしかできなかった。
言葉という形にはできないが、ともあれ心には特別な何かが残っている。観て良かった。誰かと感想を話したら、きっと得るものがある。そんな風に今は考えている。

 

独裁者の子どもたち: スターリン、毛沢東からムバーラクまで

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全然関係無いが、おやつは静岡市の「プブッピドゥー」なるカフェでアップルパイを食べた。味は普通。コーヒーの量が多いのは有難い。

でもこの店、アメリカ雑貨で飾られているのに、メニューは「ちょっと前の流行を際限なく取り入れた喫茶店」に近いうえに、置いてある本もまた健康本などという、野暮ったさ。アメリカンダイナー的なものを期待したので、これにはがっかりした。
しかもメニューの後半には、数ページにわたる「水素水」の解説が。僕の飲んだホットコーヒーにも、高濃度水素が含まれているらしい。すごいですね、物理法則を超越したものを飲んでしまった。
その他、いろいろと残念な店だった。

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さて寝る。
『独裁者と小さな孫』は、映画館でもう1回は観るつもり。
本当に良い映画だった。

 

独裁者のためのハンドブック (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

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