「ぐりとぐらのカステラ」と、奇妙な書店員。


 



今日のおやつ。マリアサンクのカステラ。 
気温は20℃、晴れていて風も無い。というわけで、自転車で街をぐるぐると周った。
14時過ぎにマリアサンクで「ぐりとぐらのカステラ」を食べる。静岡市美術館の展覧会にちなんだメニューなので、今日が食べ納め。
定番にしてほしい位に気に入っているが、他のケーキとは少し雰囲気が違う気もする。
その美味しいカステラを食べ、紅茶を飲んで、本を読む。






せっかく静岡の街まで来たのだからと、大きな書店に行った。
この大型書店は、ポイントカード制を実施している。

  • ルール1:購入金額に応じてポイントが加算される。ポイントの期限も更新される。
  • ルール2:500ポイントを消費して、500円の値引きか、同金額の図書カードを得る。
  • ルール3:1000ポイントを消費し、代金から4%を引く。

わざと具体的な数字は変えてみた。中心街にある書店ではいちばん気に入っていて、別にこの店や店員に、思うところは無い。読んだ人に「ああ、あの〇〇書店か。酷い店だ」とは思ってほしくない。
でも今日は、思わず日記に書いてしまうくらいの、ちょっと奇妙なやり取りがあった。



本をレジカウンターに出し、ポイントカードを添える。1300ポイントほど溜まっている。
「ポイントを使いますか?」と聞かれたので、「はい」と答える。カードを受け取った店員は「4%を引かせていただきます」と言う。
えっ、と思う。声に出したかもしれない。それから「割引きではなくて、500ポイントで500円のほうを1000ポイント分お願いします」と慌てて伝える。その方が得だ。ルール3を使う局面ではない。
すると店員も「えっ」と言う。それから「1000ポイントは4%で…」と説明を始める。説明が終わると黙りこむ。
もう一人、レジの操作を担っている店員(アルバイトだと思う)は、リラックスした状態で「待機中」といった感じ。このやりとりは職分ではないし、関わる気もない様子だ。


なんとなく話がずれている。
少年漫画「ジョジョの奇妙な冒険」みたいな雰囲気がする。少しだけずれた異世界のようだ。
「何かがおかしいッ!!こいつは普通じゃない。ちょっとした言葉のスレ違い?そうかもしれない。でも重要なのは今が"日曜日の昼間”で、ここが”街の大型書店”って事だッ!!」と思う。傍点付きで思う。


とはいえ現実は少年漫画ではないから、現実的対応として、僕は「じゃあ、いいです」と言う。有効期限はまだまだ先で、本は頻繁に買う。別の機会に、別の支店に行けばいい。
すると先ほどの店員は「では4%引きで〇〇円の値引きです」と電卓を叩く。そして、レジを「4%引きモード」に切り替えようとする。
日本語の難しい(あまり機能的ではない)側面である、否定か肯定かわかりづらい表現をしてしまった。
慌てて、今度ははっきりと「いえそうではなくて、500ポイントで500円の値引きを1000ポイント分、つまり2回行い、この買い物で1000円分の値引きをお願いしたいのですが」と申し出る。
実際は、もう少し表現を気にして言葉にした。クレーマーにはなりたくないし、理屈と数字でやり込めたくはない。
するとまた「はい、1000ポイントでは4%ですね」と言う。そしてレジ係は、肩の力を抜いて待機している。今まで何度もこの店のポイントを使ったが、こういう反応は初めて。


温厚を誇りとする静岡県民としては、ここでもめる訳にはいかない。あらゆる手段で紛争は回避するのが、現代の紳士なのだ。
店員を「再起不能(リタイア)」にして「To be continued」で済む問題ではないし、もとよりそういう能力は無い。
ほんの少し通じ合えないだけの話。声を荒げれば話は早いのかもしれないし、怒るのが正当なやり方かもしれない。でも普段から怒り慣れていないから、即興で怒れない。何より僕は怒っているのではなくて、戸惑っている。
というわけで、少し別の方向から試みる。
本を手に取り、カードだけ出して「この500ポイントの値引きをお願いします」と言う。「1000ポイントぶん、お願いします」と伝える。
件の店員は「では1000ポイント引かせていただいて、図書カードを2枚お作りします。絵柄をお選び下さい」と、すらすらと対応してくれる。気を悪くしたり、怒っている感じはしない。
かなり不安を感じながら「カードはいいです。いま使えますか?」と聞いてみたところ「はい」と言う。
本をカウンターに渡し、その後はつつがなく1000円引きの買い物を完了した。カバーは無し、袋も要らない。


いつも普通に働いている、見た目や物腰は普通の中年男性。たまに見かける「この人、この仕事に向いていないかもしれない」と思わせるような人では、全く無い。
頑なになっている、という感じでもなかった。隣のレジ係も、これといった反応が無かった(この人も変だと思う)。
今思えば、一時的な視野狭窄に陥っていたのかもしれない。それなら僕にも経験がある(たくさんある)。手に携帯電話を持ったまま、携帯電話を探した事だってある。
うるさ型の客が「4%引き、ってどれくらいの人が使うの?」と店員に聞いているのは、何度か見たことがある。「意味ないじゃん」というニュアンスがあったのだと思う。しかしそれは、僕とは無関係だ。




目的の本は買えたし、目論見通りに1000円の値引きもできた。しかし奇妙な、時間にして1〜2分の攻防だった。
ごく稀に、こんな風に日常がズレる事があるから、油断できない。海外旅行に行くとズレばかり感じて面白いが、静岡の書店では、面食らうばかりだ。
そして今でも「あのやり方で、気を悪くしていないかな、1000円にこだわるケチ野郎と思われていないかな」と、ぼんやりうじうじと考えている。とはいえ書店の買い物で、1000円引きは結構嬉しい。

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