映画「アイリッシュマン」

今日は「映画の日」。
毎月1日の映画が安くなる「映画の日」ではなくて、「いい夫婦の日」とか「素因数分解の日」のような、記念日としての映画の日

だから毎月の「映画の日」よりもさらにチケット代金が安い。
だからというわけでは全然なくて、単に思いつきで近所の映画館に行って「アイリッシュマン」を観た。


映画「アイリッシュマン」本編映像

Netflixが主で劇場公開が従というちょっと変わった公開形態、210分という上映時間、アメリカのギャング映画でとにかく重厚、そんな昨今珍しい映画だからか、お客さんの入りはそこそこ。たぶんシネコンではあっという間に上映終了してしまうのではないか。

スコセッシ監督の作品で、ロバート・デ・ニーロアル・パチーノなど、大スターがてんこもり。というか、爺さんとおっさんが登場人物の8割を占める。
正直言って、好きなジャンルでもないし、「なんとなく」で興味を持った作品だったが、実に良い映画だった。観て良かった。

アメリカの戦後史に沿ってある男の生涯が描かれる。伝記映画というのだろうか、トラック組合の役員であり、よき家庭人であり、そしてマフィアの一員で殺人もこなす主人公の回想で物語は始まり、終わる。
日本でいうのなら、高度経済成長に乗った戦争帰りの男が組合活動に関わりながらヤクザとも付き合い、田中角栄中曽根康弘力道山とも関係し、実在の事件にも少しずつ参加しつつ、昭和の終わり頃に病院で孤独に介護される、そういう作品だ。スコセッシ監督らしく暗くて乾燥した風合いに仕上げている。

 

アイリッシュマン(下) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

アイリッシュマン(下) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

アメリカの現代史だから、よくわからないところもある。なんとなく自分の感性(そして多くの日本人の感性)には合わない言動や行動もある*1
しかしこの「よくわからない、重苦しくて乱暴な世界」を、ひたすら見続けることができるのだ。
普段の「大好きなジャンルの作品を堪能するとき」が、自分の内側をカラフルに塗りつぶす行為だとしたら、今日のこの「アイリッシュマン」では自分の外側を雑に暗く描きつけるようなものだった。内側に描かれたものはとても少ないが、それでも最後には自分の輪郭が浮かび上がってくる。

なかなかに得難い体験だった。ひたすら重くて長くて、ちょっとしたユーモアもあって、良い映画。自宅で、例えばiMacの画面で観ていたら途中で集中が途切れていただろう。そういう意味でも、映画館で出会えて良い作品だった。

 

メメント (字幕版)

メメント (字幕版)

 

 

お題「最近見た映画」

*1:たぶんアメリカ人には大絶賛じゃないかな、とは何度も考えた。