仕事の後に、伯父の家でスーツケースを受け取った。
もう歳をとって大きな旅行には行かない伯父と伯母が、不要になったスーツケースを譲ってくれるというのだ。
実際には廃品の処理だろう。僕も使わないのなら、そのまま不用品として処分するつもりだ。

スーツケースはとても古くて、十分に綺麗。
とはいえ、同じくらいの寸法のスーツケースは持っているし、外装のワインレッドは好みの色ではない。僕の安物(無印良品)のほうが機能性も高い。伯父曰く「ものは良い」とはいえ、古いものだから仕方がない。
しばらく放置した後に、捨てることになりそう。あるいは、他の用途…例えば趣味の道具を放り込む箱として活用するつもりだ。

そのスーツケースから4万円の現金が入った封筒が見つかった。
ハンドルやヒンジにアクセスするための、内張りにあるジッパーを開けたところに収まっていたのだ。おそらく、旅行中の不意の出費に備えたものだろう。今はもう無い信用金庫の封筒に入っていた。
伯父伯母に問い合わせたが、記憶に無いという。
使ってくれていいよ〜と言うが、微妙に高額である。問答無用で突き返すほど高額では無いけれど、手間賃代わりに貰っておいしいものでも食べておしまい、というほど少額でもない。
ありがたい話ではあるが、少しだけ悩ましい。伯父伯母とも、最近はずいぶんと自分が手伝うことが増えたから、数年分のお小遣い&手間賃をまとめて貰ったようなものだと考えても良いのだけれど。
今日は少し早めに目覚めたので、仕事に出る前に夕食の準備を済ませていた。
帰宅したら、真空断熱鍋に煮豚ができている。あたたかい主菜が出来上がっているだけで、夕食はずいぶん楽。でも毎日煮豚を作るわけにはいかない。世界は優しくないのだった。






