もう一週間以上も前になってしまった福井旅行。そのメインの目的地であった、福井県立恐竜博物館について書く。

といっても、この博物館がどんな場所なのかは有名なので、思い出と感想だけを書いていく。

なにしろ格好良い博物館だった。
建物が格好良い。
展示されている骨格標本が格好良い。復元模型も、もちろん格好良い。

自分はそれほど恐竜には興味がなく、また"日本産"であることも気にしていなかった。
だけど、本物がたくさん並んでいること、あるいは土地と結びついて立派な博物館があることは、とてもすてきなことだと思う。

展示コースの最初の頃は、ちょっと地味だ。
地球に生まれた最初の生物〜みたいな部分は、ほとんど模様のついた岩である。自分はわりと好きな分野なので解説文も全て読むが、多くの人は素通りする。
でも、大きなホールに入って、巨大な「動く恐竜」が現れると、誰もが立ち止まる。
化石と学説に基づいた精緻な模型は、やはり惹きつけられる。

もちろん骨格標本も楽しい。
ポーズが凝っていて、説明も親切。ただ、数が多いので、全て見ていくと疲れてしまう。

ちびっ子も老夫婦も、それぞれ熱心に楽しんでいる。
博物館で、ここまで老若男女、国籍や人種を問わず全員が楽しんでいるところは他に無い。春に行った東京の国立科学博物館も、皆が熱心だったが、この恐竜博物館はそれ以上。しかも、みんな笑っている。

考えてみれば不思議なことだ。
誰も見たことがないが、誰もが知っている。もう二度と会えない、見ることもないのに、模型の恐竜が草を食んでいるところを見ると「おおー」と見上げてしまう。

海外の博物館から貸与されているという、表皮や筋肉組織の痕跡が残る貴重な標本も展示されていた。胃の内容物までわかるのだと、スタッフが楽しそうに説明していた。
小学生にも大人にも、なんだかよくわかんねえけどすげーと騒ぐ若いカップルにも、それぞれ違う言葉で説明する。そして皆が、この化石標本はすごいものなのだと納得している。
なかなかできることではない。

巨大なドームのなかに巨大な骨と、まるで生きているかのような模型。
コースとしては中盤だが、もう外のことなんて忘れてしまう。

スタッフの人達が親切なことも印象的だった。
フラッシュ禁止の案内表示や声掛けだけでなく、カメラやスマホの「フラッシュ禁止のための操作」にアドバイスもしていた。
よくわからない通知や設定画面が出て困っている老人のスマホを見てあげているスタッフもいた。そこまですれば、皆きちんとルールを守るのだ。

恐竜の時代だけでない。他の時代の展示も盛り沢山。


自分はこういう、現代人より少し前の時代の巨大な哺乳類が好きなのだ。
ふと、閉館してしまった東海大学海洋科学博物館・地球科学博物館を思い出した。

図書館スペースやカフェ、お土産コーナーも充実していた。
全体の構造がわかっていれば、こういう広々した場所で小休止して、2周目を楽しむのも良いかもしれない。


旧館なのか、ほとんどまとまった展示のない、しかし立派な棟もあった。いつの間にか迷い込んだが、人が少なく、バックヤードっぽい展示などが点在していて、これはこれで素敵。
企画展などが行われる場所なのかもしれない。

恐竜博士は、施設のあちこちにいる。
この恐竜博士の前や、博物館の前では、何度か記念撮影を任された。
自分だったら、一人旅のメガネ中年男性にカメラを任せるなんて絶対にしないのだが、わりと頻繁に頼まれるのである。
ある老夫婦の記念撮影をした後に、遺影に使うかもしれないから…と記念撮影とは別に個人写真も頼まれてしまった。それならばバッグは降ろして、白い壁を背景にしましょうと余計なアドバイスをしたのは、母の葬儀の経験から*1。
後になって「僕の撮った写真が本当にこの人達の遺影になるのか」と考え、複雑な気持ちになった。

建物は、巨大な銀色の卵を抱え込んだような形をしている。
その屋上は、ほぼ誰もいない庭園となっていた*2。

屋上にも恐竜博士がいた。

この建物とは別に、周辺の丘や山に恐竜関係の施設が点在しているようだ。
中学生が化石発掘の課外授業をしていたり、幼稚園児がハイキングをしているところが見えた。
恐竜好きならずとも、行く価値のある場所だと思う。
僕はすっかり気に入ってしまった。
またいつか再訪したい。できれば早いうちに訪れて、もっと時間をかけて滞在したい。
最初に書いたように、とにかく格好良い場所だった。










