夕方に乾物のヒジキを戻していたら、ワレカラが2匹も見つかった。
薄くてひょろっとしていて、想像よりもずっと大きい。
この"遭遇"は、自分にとっては一大事件だ。
子供の頃から図鑑では見ているし、水族館の標本などでも紹介される珍しくはない生き物だ。「海の生き物豆知識」のようなコラムでは、古今和歌集など古典でも「ワレカラ」と書かれていると載っている。
そんな身近な生物だが、現物を手に取るのは初めてかもしれない。
もちろんヒジキに付着していたのだから、一度は茹でてあるし、そのあとに乾燥を経たものだ。しかし、かなり欠落はあれど、ひと目でワレカラとわかるかたちをしていた。
大手スーパーマーケットのプライベートブランド品で、他に全く混入物など無いヒジキだったから、少し意外ではあった。
でも自分としては、得をした気分だ。
ワレカラは取り分けてコップに入れておいたが、結局は捨てることにした。
ただ捨てるのはもったいないので少し食べてみたが、味は全くしない。
残りはなんとなく、庭に捨ててみた。せっかくの珍しいものを、排水口に流すのはためらわれたのだ。
生き物は好きで、ビーチコーミングや磯遊び、水族館巡りもするけれど、意外と出会っていない「定番」が多い。
それでも、生活の中や旅行中に思いがけず出会えた時には楽しめるので、知識とは無駄にならない。知識は世界の解像度を上げることに役立つ。上がったから幸せが約束されるわけではないのが、つらいところである。