この10年ほどは、実家のキッチンで沸かしたお湯は、ポットに移していた。
わりと高級なポットで、シンプルな作りながら保温機能は高い。父も母も、「ちょっと高いが性能は折り紙付きです」みたいな品が好きなのだ。
でも父と僕の2人で暮らすようになって、この高性能ポットが生活に合わなくなってきた。朝に沸かすお湯の量は少なく、使用量も少ない。となると、冷めやすいお湯を長く放置することになる。
ならば使う分だけ沸騰させたほうが良いだろう…と考えて、電気ケトルを導入した。
それがタイガー社の電気ケトル「わく子」さんだ。
最近あまり見なくなった、ダサい名前の家電である。
白くて丸い、なかなかかわいい形をしている。
電気ケトルなんて家電店のオリジナル商品から中国製の安物、それにティファールなど種類は多いが、今回この「わく子」さんを選んだことには理由がある。
「わく子」さんは小さい。
他の電気ケトルが0.8Lから1.2Lのところ、0.6Lしかない。様々な状況を考えて、この量で十分だと判断した。小さいほうが使用可能量の加減が低いので、少ない量で沸かすことができる。それに加熱時間も多少は短くなるはずだ。
「わく子(敬称略)」は多少ではあるが保温性能がある。電力によるアクティブな保温ではなく、ただ容器の構造が少しだけ冷めにくくなっているだけだが、それでもありがたい。
「わく子」は蒸気レス、転倒時の安全機構などが充実している。父が使うことも考えると、できるだけ安全性は高いほうがいい。
それ以外にも様々な検討を経て、「わく子」をキッチンに迎えたのだった。
カップ1杯のお湯ならば、1分経たずに沸騰する。紅茶やコーヒーの準備をしているうちに必要分が用意できるので、とても助かる。
一人暮らしをしていた時には、コーヒー用に注ぎ口が細くなっている電気ケトルを愛用していた。
コンロが1口しかなくて狭く、しかし台所スペースが妙に広い謎のアパートだったから、朝はまず電気ケトルでお湯を沸かす習慣ができていた。その時の電気ケトルは、車に積んである。車には110Vコンセントがあるので、出先や災害時に使うことができる。
「わく子」には、日本の家電らしく、商品名や機能を示したシールが貼ってあった。
もちろん全て剥がした。
「わく子」と書かれたシールは目薬に貼り直した。
特に意味はないが、これで我が家には電気ケトルの「わく子」と、目薬の「わく子」が存在することになった。
そんな火曜日だ。
明日は休暇日。元気かつ幸運ならば、水族館に行くことになる。そのために今日は早く寝ます。おやすみなさい。