ほぼ予定通り、四国への旅は進行中だ。
早朝に出発し、6時間ほど高速道路を西に走り続けて、今日は香川県まで辿り着いた。
老齢の父との旅なので、休憩時間は多い。
月曜日だから定休日や休館日の施設もたくさんあった。
それでも、父に「本場の讃岐うどん」を食べさせることができた。何年か住んでいた土地だから、おすすめの場所に連れていくだけで、ちょっとうれしくなってしまう。
ほとんど時間が無くて、フェリーに乗って離島に行き、数十分後には戻るような「ほとんど船に乗っているだけの船旅」もした。父は海沿いの土地で育ったから船そのものは慣れたもの。でも、静岡のそれとは違う静かな瀬戸内海には驚いていた。そして、ただのんびりとフェリーで風景を眺めて小さな島に行くという行為を「これは良いね」と言ってくれたのだった。
父をホテルに残して、夜に少し近所を散歩してきた。
実は昔の職場から徒歩数分のところに宿をとったのだ。ひとりで夜に素敵なカフェでも…と思ったのだが、かつて働いていたエリアで夜におひとりさまカフェなんてしたことがないので、素敵なお店なんてわからないのだった。
でも、良い書店や古書店が多いのが高松という街。旅先だというのに本をたくさん買い込んでしまった。
ついでに、働いていた時には昼食を買っていたパン屋で、プリンやスイートポテトを買ってしまったのは、旅の謎テンションの作用である。
ところで、今夜の宿はビジネスホテル。中心街の古いホテルだ。
僕の部屋は521号室。
520号室までは順に並んでいるのに、この部屋だけ501号室の横にある。角部屋なのは結構だが、なぜそうなっているのかわからない。
そして、どういうわけか「ドアと同じ高さの細長い鏡」が、入口ドアの右側に貼られている。そして、部屋に入ってすぐのところにも、同じ鏡がある。
窓際のテーブルの引き出しを開けると、約款や観光案内チラシ、それに聖書とともに手鏡がある。父の部屋にはそれらの鏡は存在しなかった。
なんとなくホラー映画の序盤みたいな場所である。
でもまあ、鏡が過剰だからといって困ることは全く無いのだった。窓の外は、かつて住んでいた高松の街だ。鏡を覗き込んでも何も変わりはない。
だからあと少ししたら寝ます。明日も早いうえに、今日はさすがに疲れた。
というわけで、おやすみなさい。