個人的に曰く付きのホテル

予定通り、愛知県や三重県へ来ている。
午前中には愛知県で仕事関係の顔合わせをしてきた。
空いた時間にコメダ珈琲店のご先祖様みたいな愛知の喫茶店にも行けたし、人生初の豊川稲荷も楽しかった。

午後からは三重県へ。
菰野町でカフェに入り浸り、サイクリングを楽しんだ。食べたものや行った場所は、帰宅してから書くつもり。

そこまでは順調だった。
宿のある四日市市に行ってからが、なかなか大変なのだった。
急な大雨や、行きたかったお店の臨時休業は、疲れた身体に厳しい。

それよりなにより、今日の宿泊先であるビジネスホテルは、個人的に曰くのある場所だった。

 

 

もう10年以上前に、僕は四日市に住んでいた。
そのときの勤め先では、小さな諍いが頻発していた。若い社員も多かったし、初めてのことばかりで全員が余裕も無かったのだ。大きな会社の地方の事業所で、職場のサイズ(化学コンビナート)のわりに構成人数が少なかったのも、人間関係のトラブルが多い理由だったかもしれない。

とにかくそんな職場だったが、一人の熱い(暑苦しい)リーダー格の人間が、こんなことを言い出したのだ。
「泊りがけで腹を割って話して、職場の人間の壁を無くそうぜ!」

そんなわけで研修会場として借りたのが、今晩の宿であるビジネスホテル。
当時も今も、あの”研修”は無駄だったと思う。
まだ田舎に行けば「飲みニケーション」なんて言葉があった時代だ。素面の僕にとっては、会議室を使っての問題解決ならともかく、夜に部屋へ集まっての「ざっくばらんな意見交換と、本気の話し合い」なんて無駄にしか思えなかった。
実際に、そのときは酔っ払いが喧嘩をして、翌日にリーダーが綺麗事を言って、係長と課長が激怒&謝罪をすることになった*1。もちろん、問題解決なんてできなかった。

そんなやるせない夜だったので、僕は夜中に自宅に帰ったのだった。当時の自宅であるアパートが徒歩圏内だったことも、無駄な印象を強めていた。

 

 

今日、三重県に到着した直後に、ホテル名と、その「人間関係の殻を破ろうぜ研修」が結びついたのだった。「もしかして、あのホテルか?」と思った直後に、場所や名前が研修会場だったことを思い出した。
一昨日に予約した時は、すっかり忘れていた。

先ほどホテルに到着し、廊下を歩いているときに「ああ、この変な階段とエレベーターホールは、まさにあの場所だ」と実感した。

 

 


そのせいで、今夜はいろいろなことを思い出している。当時の胃痛や、喧嘩の仲裁や、その後に自分を襲った精神の病について。
もちろん三重県にわざわざ泊まるのは、当時の良い思い出や、今も続く人間関係や、大好きなお店があるから。先ほども四日市の街で、当時から大好きだったカフェに行ってきた。

 

 

しかし、ふとしたことで過去は蘇る。楽天トラベルの勧めるままに、予算と立地と無料駐車場に惹かれて決めた宿が、酷い思い出のホテルだったなんて。
とはいえ、もし予約する時点で知っていても、やはりこのホテルを選んでいたかもしれない。今の自分がどう反応するのか、ちょっとだけ興味があったから。自分にはそういう形で、思い出や気持ちを試すようなところがある。
個人的な屈託のある街のなかでも、とびきりの場所で今夜は眠ることになる。変な夢を見なければ良いのだが。

 

お題「ささやかな幸せ」

*1:僕は他社からの出向だったので、こういうトラブルとミスには巻き込まれたかたちになる。ハラスメントに近い研修は、出向先の上司としては冷や汗ものだったはずだ。

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