昼間は忙しくて暑いので、外で何かをする気にはならない。
この数日は、運動不足がひどい。不健康…というより、そろそろ病を招きそう。
なので、暗くなってから外を1時間ほど歩いてきた。
遠回りの道を選んで市民公園に行き、ぐるりと外周を歩く。
夜だって蒸し暑いし、風景が見えないから昼の散策ほどの楽しさもない。
でも明るい月の下でとぼとぼと歩くのは、これはこれで新鮮な気分だ。
市民公園には想像以上に人がいた。犬猫の散歩が禁止されている公園だから、ほとんどの人がウォーキング、散歩のようだ。
静かに、周囲とは一定の距離を保ってただ歩く人達を見ていると、あの新型コロナ流行初期の自粛期間を思い出す。
スーパーマーケットで同じ通路に居合わせるだけで、息が詰まるような警戒感を抱いていたあの時期。どこまで我慢すればいいのか誰もわからなかった時期に、それぞれが工夫をしていた。
僕は四国に住んでいて、やはり夜に散歩をしていた。アパートの周りの、まだ見知らぬ町を探検していたのだった。
ところで散歩の帰路にはスーパーマーケットに寄り道をしたのだが、その時に変な出来事があった。
セルフレジで会計を済ませていたら、見知らぬ女性に背中を叩かれたのだ。
若者は「カナリアさーん!!」と大きな声を出していた。そして僕の顔を見て「じゃ、なかったですね」と驚き、そして大層恐縮して謝っていた。
セルフレジを監視していた店員さんも「なんでしょうね、あれ?」と訝しんでいた。
学生時代からロックバンドを始めて30代前半の今も続けている。そのせいか服も若い頃から変わず、老人からは学生に勘違いされることもある。そんな雰囲気の人ではあった。田舎では珍しいが、大きな街ならありふれている感じ。
となると、カナリアさんというのはバンドの関係者だろうか。ライブハウスの古参で周囲には「タメ口」と「カナリアさん呼び」を求める、自称気さくなロックンロールおじさん。
なにしろ何もわからないので、「カナリアさん」について妄想するしか無いのだった*1。
一方的に叩かれたのだから、せめてどういう勘違いだったのか、カナリアとは何者なのかくらいは聞いておくべきだった。そういう咄嗟のコミュニケーション能力があれば、人生はもっとカラフルになるのでは、と思う夜である。
そのスーパーマーケットで買ったブドウを5粒ほど食べて、シャワーを浴びて、今に至る。明日は休日なので、今夜はしっかり眠りたい。
*1:どうしてもロックバンド方面に偏るのは、自分の若い頃の諸々に引きずられているから。貧困な人生経験からは、貧困な想像しか生まれないのだ。かなしい。