人命救助と豆乳コーヒー

数日前に、路上にへたり込んでいる人を見つけた。
熱中症かな、と声をかけたところ上手に話ができない。これはまずいと飲み物を渡し、すぐ近くの交番にも声をかける。

救急車は呼ばなかったが、交番で回復した後に病院へ行ったようだ。
旅行者だというので、なにかあった時のために名刺を渡しておいた。

 

 

今日、その人からお礼の電話があった。
旅行を途中で切り上げて、関東の自宅へ帰るのだという。交番にお礼に行くので、良かったら会ってくれないかという。ちょうど自分も出かける用事があったため、顔を出してみた。

交番の前でお互いにぺこぺこ頭を下げて、とにかく元気になって良かった、今年の夏は暑いですなあと雑談をする。そして別れ際に、今回の件のお礼として、ジュースの詰め合わせをいただいた。
旅先だというのに丁寧な人だ。

貰った詰め合わせは、人参やトマトジュースの短い缶が化粧箱に詰めてあった。

しかし、どのジュースも見かけないものばかり。
販売者を見るとエム・オ・ーエーインターナショナル。
MOAの*1、つまり世界救世教の関連会社の製品だった。

そういえば東伊豆や箱根では自販機を見たことがある。
どうして宗教団体がジュースを売るのか、僕には理由がわからない。自然農法を広めていると聞いたことがあるから、同様に健康に良い飲料を世に広めることも教義に適ったことなのかもしれない。

ともあれ、ジュースはジュースである。無神論者の自分にとっては有り難い贈り物でしかない。

先ほど、そのなかの1本を飲んでみた。
コーヒー入り豆乳飲料有機栽培大豆を使用とのこと。
甘さはほどほどで、コーヒーや豆乳とは別の香ばしい風味がある。原材料欄にある麦芽エキスなのかもしれない。

 

 

ふらふらしているところに付き添っている間も、そして今日も、宗教の話は一切しなかった。でも信者さんだったのかもしれない。
思えば、旅といっても観光客らしからぬ雰囲気ではあった。
旅先でギフト用ジュース詰合せを入手し、それが偶然にMOA・世界救世教関連の品ということもないだろう。宿泊あるいは訪問先である宗教施設で急ぎ手配したのではないか。

そういう推測をしていると、会話の内容から立ち居振る舞いまで全てが「宗教」っぽく見えてしまう。といっても馬鹿にするだとか忌避感を抱くようなことはなくて、四国暮らしで出会ったお遍路さんのような印象を持っているだけなのだが。
僕とはまるで価値観を持つ、物静かで礼儀正しい人。
そういう人を助けることができたのは、とても良かったことだと思えてくる。

 

 

ちなみに警察か行政かは知らないが、何かしら小さな表彰のようなものがあるらしい。「休みを作って参加するような大仰なものではなくて、自宅に感謝状が届く程度のものではないか」と、交番のお巡りさんは言っていた*2

警察や行政は、おそらくジュースの詰め合わせは贈ってはくれないだろう。
残念なことである。
お礼を目当てに人助けをしたわけではないのだとしても、ジュースが無いよりは、有ったほうがいい。神様なんて信じていない自分でも、ジュースは信じている。もちろん豆乳飲料だって同じだ。

 

お題「ささやかな幸せ」

*1:Mokichi Okada Association

*2:確定したことは何一つ言わないが、職務外の親切も惜しまない、田舎の交番に適応した警察官だった。すばらしい。

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