嵐の後に花束を配った日

ひどい夜、そしてひどい台風だった。

昨晩は、とても変な疲れ方をしていた。母の葬儀が終わり、疲れてはいても気が高ぶっていたのだった。
頭がぐらぐらしていて肩は凝っていた。でも、いくらでも起きていられそう。
とはいえ、翌日以降のことを考えたら絶対に早く寝たほうがいい。

しかし台風がそれを許さない。
深夜になっても、スマホは警報を鳴らし続ける。エリアメールもがんがん届く。
知っている地名で住民の避難が行われ、近所の川は危険水位を示す。

雨は0時を過ぎたら一旦は止んだ。
ちょっと外に出て家の前の川を見てみたら、変な声が出た。
見たことがないほどの、大量の水が流れている。
子供の頃から馴染んだ川だが、こんな水位は見たことがない。まだ幼稚園児だった頃に洪水があって、その後に大規模改修をして、放水路みたいなつくりになったのだ。その川が、あと少しの大雨で溢れそうになっていた。

我が家は少し高台にあるし、山や崖からも遠い。
だから、安全を信じてとりあえず寝るしかないのだが、そのうち「記録的短時間大雨情報」まで流れ始めた。
消防団員や消防士がパトロールをしている音が聞こえるなか、それでも寝ることにした。
エリアメールが何度も鳴るけれど、幸いなことに僕の住む地区は警告の対象ではない。それでも、不安を抱えたままの浅い睡眠になってしまった。

 

 

そして今日に至る。


昨日の葬儀では、花を大量に使った。
母の希望により、宗教色を無くして、花をたっぷり使う葬儀にしたのだ。

その花を友人知人達に配るため、静岡の中心街へ行く。
飲食店をやっている知人が数人いて、イベントの後は花を引き取ってもらうことが多い。今回は葬儀の花だが、菊などは全く使っていないため、お店にも使ってもらえるだろう。そう目論んで家を出たのだが、静岡に向かう道まで行ったところで大渋滞。

高速道路は全て通行止め。
幹線道路の一部も冠水や事故で通れない。山のほうでは土砂崩れもあるし、とにかく静岡県中部のあちこちが交通麻痺状態。

がんばって市街地へたどり着いたら、停電のため信号の多くが消灯していた。
雑居ビルのレストランや雑貨店では、商品や什器を外に出して干している。雨漏りや、流れ込んだ水で、水浸しになった店が多かったらしい。マンホールから水が吹き出しているところもあった。

そして断水も酷い。
かなり広い範囲で発生していたようだ。

だから、友人の店を巡っても、もちろん今日は臨時休業。
どの店でも気持ちよく花は受け取ってくれたけれど、まずは店の復旧が最優先。
僕も、ブレーカー復帰時に壊れた業務用冷蔵庫の修理や、レジシステムのトラブル対応・サービスセンターとのやりとりなど、手伝えることには関わらせてもらった。

本来は、花を譲ったついでに、ここしばらく遠ざかっていた外食*1を友人の店で楽しむつもりだった。あるいは焼き菓子の購入や、ケーキのテイクアウトも存分にしたかった。
そういったあれこれが出来なかったのは残念だが、友人達の苦労を考えれば大した問題ではない。というか、自分がのほほんと花など配っている状況が心苦しくなる。

 



帰路は渋滞を用心して山側の道や旧道を選んだのだが、どこも被害が酷買った。
途中で立ち寄ったコンビニエンスストアでは、冷蔵設備は全て蓋をして、常温のペットボトルなどを売っていた。

安倍川は河川敷のグラウンドまで水に浸かっていた。
点検中で通行止めになっている橋もあった。
通れる道が限られているために、集中した車で大渋滞が起きていた。

 

それでも、自宅の周辺は目立った被害もなく、せいぜいスーパーマーケットの品揃えが寂しいくらい。
冷蔵庫の生鮮食料品が乏しくなっていたので買い足して、いくつかお惣菜を作り、夕方にはコーヒーを淹れて飲んだ。

まだスーツはクリーニング店に出していないし、銀行や市役所の手続きも済んでいない。母の私物も整理していない。思いついてToDoリストに加えるタスクが、どんどん溜まっていく。

でも、とりあえずは日常に戻る。作りおきの惣菜は、その第一歩だ。
夕食も久しぶりに、お弁当や外食や"冷蔵庫にあるもの"ではなく、きちんと作ったもので用意できた。

 

 

というわけで、今日こそは、ぐっすりと安心して、朝まできちんと眠りたい。
その前に読書。ここ数日は、なんとなく「ベッドに入ってからの読書」ができなかったので。考えてみれば、この読書も日常の一部だ。

 

 

 

 

*1:母の看取り〜葬儀の準備まで、外食の機会は多かったが、それは父や親戚との慌ただしいものだった。自分のための(趣味的な)外食は久しくできていない。

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