昨日に訪問した岐阜の養老公園、その一角にある「天命反転地」について書く。
なかなか説明しづらい施設だ。
公園サイズの巨大なアート作品(テーマパーク)なのだが、似たものを思いつかない。
とはいえ、かなり有名な場所だから概要を知っている人も多いはず。
リンク先の公式サイトが最もわかりやすい。
ずっと行きたかった場所だが、色々あって初めての訪問だった。
なにしろ斜面ばかりの施設で、小雨でも危険と聞いていた。この日帰り旅行を思いついた時からずっと、当日まで雨雲レーダーを見ながら、行くか否かを迷っていたくらい。
幸いなことに、昨日は曇り時々晴れといった天気。午後からは通り雨だというから、昼まで楽しむことにした。
平日かつ開場直後ということもあり、ほとんどお客さんはいない。
カメラを担いだ青年や、高齢者の夫婦、大学生らしい女性3人組は場内で見かけた。
まだお互いにぎこちなく敬語で話す若いカップルと、ゴルフウェアみたいな派手な服装の中年カップルもいた。
前者は場内で3回ほどすれ違い、そのたびに記念写真を頼まれた。にこやかに対応したが、後で考えればスマホのインカメラで距離を縮めるのが令和の若者のセオリーだと思う。
後者は建物のなかでポロシャツやTシャツを脱いて抱き合っていた。どう考えても非常識だが、ここまで非常識だと気にするのも馬鹿らしい。天命反転地を巡れば僕もそのような特殊な気分に陥るのかと危惧したが、自分の場合は特にそういうこともなかった。他の人達も同じ。ともあれ、そろそろ梅雨という季節の午前中には見たくない光景ではあった。
ともあれ、視界に人がまるでいないことも多い、基本的には独占状態だったのは幸いだった。
山の斜面に作られた坂ばかりのテーマパーク(参加型のアート作品)だから、マスクを適宜外せるのはありがたい。
迷路じみた建物が山肌に埋まり、通路も壁も全て水平垂直な場所がない。扉はだまし絵のように歪んでいる。大抵の場所は踏み入ることができるし、いかにも繋がりそうな細い通路の先が行き止まりだったりもする。
町営の公園施設なのに、安全基準より作品の設計を優先しているところも面白い。
大きな穴には柵もなく、落ちてしまった場合の登り口などリカバリー手段もない。たぶん落ちたら大怪我をして、その後に誰かを呼ぶしかない。見晴らしの良いところに警備員さんが1人いるけれども、全てが見渡せるようなつくりにはなっていない。
いかにも通れそうな溝が妙に細くて、たぶん太っている人は途中で困りそうな場所もあった。
そういったスリリングで、見たことのない風景(でも、それぞれのパーツは見慣れている)のなかを好き勝手に歩いていく。天気と、次の予定との関係で2時間足らずの滞在だったが、もっと長く楽しみたかった。
ただし疲れる。
先に書いた通り、水平な場所が全くないのだ。
通路に見える場所も斜め。しかもわかりづらく、穏やかにうねっている。そういう場所を歩くのは本当に大変。カメラやスマホ・カメラの水平儀で確認すると、身体が妙に傾いていることがわかる。
それに、一人では小休止のタイミングが掴めない。つい、延々と歩いてしまう。歩けば歩くほど、新しい光景に出会えるのだから、足が止まらないのだった。
最近は運動不足だったこともあり、ことさら辛かった。
車に戻ってから足首と膝が疲れていることに気づいた。でも、心地よい疲れでもある。
素晴らしい場所だった。
よくもまあ、こんなケッタイな場所を考案し、行政と組んで形にして、長く運用できているものだ。養老町ありがとう。荒川修作氏とマドリン・ギンズ氏ありがとう。
世界でここにしかない場所。
脳と身体がお祭りみたいにざわざわする。でも心は意外と冷静なのが面白い。
堪能できて本当に嬉しい。機会があったら、また行きたい。
午後に行った三重県の菰野町については後日の日記に書こうと思う。
では、おやすみなさい。