ひょんなことから「三体」を手に入れた。
「三体」は中国のSF小説。
全3部作で、どれも世界中で話題になった。日本でもベストセラーリストに長く載っていたのを覚えている。
確かに、とても良いSF小説だった。
第1部はAmazonの朗読サービス「Audible」で楽しんだ。静岡と四国を車で往復する時間に、この小説の朗読を楽しめたことは、なかなかに得難い体験だったと思う。
2部と3部は活字で。どちらも電子書籍。
2部に関してはAudibleでも読んで(聞いて)いる。
長いSF小説は得意ではないのだが、きちんと楽しめた。読みやすさが抜群で、さすがベストセラー!と感心したし、ものすごく"新しいもの"に触れている感覚は新鮮だった。
決して好きなタイプのお話ではないけれど、集中して読んでしまう、というか読まされてしまう小説。得難い読書体験だった。
今日はその「三体」に、偶然の再会をしたのだった。
数日ぶりにからりと晴れた午前中。買い物のついでに少し歩こうと住宅街を散策していたら「ご自由にお持ちください」の箱を発見した。
揃っていないコーヒーカップや、貝殻で作った小物入れ、そして大きなガラス灰皿など、いかにも不用品といったものが、木箱に入っていた。
その横に段ボール箱が並んでいて、そちらには古い本が詰まっている。
青汁トマトでガンが治るとか、学校行事のエチケット集とか、Windows Xp時代の仕事術といった、古本屋でも値段がつかないような実用本の中に、なぜか「三体」が揃いで置かれていた。他にSF本は無し。小説らしきものといえば「KAGEROU」と「世界の中心で、愛をさけぶ」だけ。
自分で紙版の「三体」を再購入はしないと思う*1。
でも無料なら読んでみたい。最近は紙の本を読む機会も、めっきり減ってしまった。
というわけで「三体」の全巻を貰うことにした。
分厚い小説が5冊。いつもかばんに入れている買い物袋が破れそうに重い。
今日の夕方に再読を開始した。
やはり紙の本だと印象が違う。Audibleの朗読で固有名詞やストーリーは頭に入っているけれど、ページめくりで読書の流れが止まる。電子書籍だとタップするだけだが、紙の本では両手を使うから、思考も一瞬切れる感じだ。
そしてページの進み具合が物理的に把握できるから、物語の進行度も予測できてしまう。
これは意外だった。指で挟んでいるページの量で、「まだまだ中盤だろう」と推測していた。自分では意識していないのに、ふと気がついたら進行度を前提に物語を楽しんでいたのだ。
普段の、それほど厚みのない小説では、ここまで明確な感覚はない。
困っているのが、本の厚さと重さ。
僕は寝ながら読書する習慣がある。だが「三体」は少し重すぎるし、厚すぎる。翻訳小説としてはこれでも"並"かもしれないけれど、手が疲れてしまう。
読書しながら眠くなってくると、力が抜けた瞬間に本が顔に当たって驚くことになる。どんなに長い本でも同じ寸法になる電子書籍とは大きな違いだ。
内容も、そして物理的にもヘビーなこの書籍版の「三体」。
せっかくだから、丁寧に読みたい。
ちなみに1冊目は少しだけ書き込みがあったが、2冊目以降は新品かもしれない。開くときにぱりぱりと音がしたし、出版社の案内も挟んだままだった。読み終えたら図書館に寄贈しようと考えている*2。
「ご自由にお持ちください」の家には、何かお礼をしたいところではある。
でも家の雰囲気からすると、取り壊し前の処分、あるいは終活・遺品整理のようだった。再訪した時には、もう箱も家も無くなっているような気がするのだ。
それに、買い物のついでの雑な散策だったから、正確な位置もわからない。
そんな日曜日。
明日は再び多忙となる。でも今日はまだ、急いで片付けたいパソコン作業があるのだった。ブログなんて書いている場合ではないし、SF小説を読んでいる場合でもない。