訪問先を辞するときに、お昼ごはんを一緒に食べようという話になった。ちょうど時刻は11:50。場所は静岡市の葵区から少しだけ清水区に入ったあたりで、僕にとっては土地勘の無い土地。「ちょっと面白いお店があるんですよ」と言うので、それならばとご一緒させていただくことに*1。
店名は「さんふぁいぶ」。名前の由来も意味も全くわからないが、実際は地味な定食屋さん。中小企業の工場で働いている人達や営業さんが昼ごはんに立ち寄りそうな店であって、気の利いたランチを食べに入る雰囲気ではない。
でも早い時刻から席の半分は埋まっていたし、なかなか良いお店に見えた。
耳の遠そうなお婆さんと、無口なおじいさんが仕事をしていて、そのゆっくりとした仕事をお客さんも尊重している感じがある。
入口には「平日は子供連れはご遠慮ください」と貼り紙が、そしてメニューには「注文がなかなか来ない場合は声をかけてください」と書き添えてあって、忙しいときには混乱することもわかる。
ここまでは、特に"面白いお店"とはいえない。
メニューも、焼肉定食やとんかつ定食など、リーズナブルかつ基本の定食やカレーが並んでいるだけ。
面白いのは量だった。いわゆる大盛り、あるいは馬鹿盛り系の店だった。
この店でのファーストチョイスだと勧められた「ミックスフライ定食」が、こんな感じ。
ご飯は「かなり少なめ」と伝えて、この量。普段の生活なら、お茶碗2杯分だろうか。
ミックスフライのミックス具合がすごい。以下に品目を記す。
これらが山盛りになっている。
エビフライは、街の蕎麦屋なら「大海老」のサイズ。トンカツも、安いチェーン店のものより大きい。全てがフルサイズの妥協なきミックスフライだった。
キャベツの量も多い。僕は白米の代わりに千切りのキャベツを食べることも多いのだけれど、普段のそれよりも多いのだった。
もちろんポテトフライも山盛り。さらに言うと、タルタルソースと辛子もたっぷり。味噌汁だけが普通。
これだけの量を食べきったので、午後は大変だった。
車の運転で、少し前かがみになるだけでも気持ちが悪い。家に帰る前にスーパーマーケットに立ち寄ったのだが、まるで夕食の献立が思い浮かばない。
いきなり頭がぼうっとなったのは、血糖値の急変かもしれない。
老人と中年の世帯で暮らしているから、普段はこんなに揚げ物を食べない。
おいしいから最後まで食べきったけれど、それでも最後の一口は大変だった。
揚げ物が出来合いの凡庸なもので、店の雰囲気が悪かったら、たぶん残して店を後にしたと思う。
しかし解せないのは、お客さんに高齢者も多かったこと。しかも、身体の小さなお婆さん達までいる。彼女らは「よくばり定食」を注文していた。僕の記憶によれば、「よくばり定食」は、焼肉・コロッケ・鶏唐揚等で構成されている。まさか「よくばり定食」だけが、高齢者も無理なく食べられる量になっているとも思えない。
しかし次に注文するなら「よくばり定食」だな、と思っている自分がいる。
夕食はサラダやヨーグルトで済ませて、今でもお腹が苦しいのに、それでも次を考えてしまっている。
これは、おそろしい事である。
ところでこの「さんふぁいぶ」の件、訪問先で教えてもらったところから、食べすぎに苦しむところまで、全て「孤独のグルメ」っぽい。あまりにそのまんまで笑ってしまう。そういう意味でも「面白い店」ではあった。
*1:ただし、先方の都合で僕一人での食事となった。つまり、場所を教えてもらっただけ。