なんだか懐かしいマリトッツォ

今年流行中だという菓子パン、マリトッツォを食べた。

この大雨のなか、母の知人が届けてくれたのだ。
大抵の流行り物は、母の友人由来で手に入る。自分達では買わない家に住んでいる。

隣の市にある中規模の焼き立てパン屋で買ったものらしい。
なにしろこんなご時世なので、荷物の受け渡しは郵便受け経由、お礼も雑談もLINEや電話で行うので詳細がわからない。

隣の市には、ラテン系のパンを焼く店がある*1。あまり有名ではないが、その店の品ではないか、と推測する。

というのもこのマリトッツォ、たぶんブリオッシュ生地のパンにクリームを挟んだものだろう。地中海沿岸の、バターを多く使ったリッチなパンであり、普通の「焼き立てパンの店」ではあまり見ない。むしろ、ケーキ屋でクグロフなどとして出会う機会のほうが多いだろう。街の焼き立てパン屋で作るものではない。

 

でも僕は人生で2回、このブリオッシュのパンに出会っている。
どちらも今回のマリトッツォのように、たっぷりのクリームと少しのジャムが挟まっていた。そしてどちらも、流行の品といった風情は皆無だった。

 

2度目の遭遇については明確に覚えている。
南米旅行をした時に2回か3回食べた。
エクアドルの空港のキオスクみたいなところで買った。
エクアドル本土で泊まったホテル、ガラパゴス諸島の小さなホテルでも食べた。前者はちょっといいホテルで、「食後にコーヒーとお楽しみくださいコーナー」に積んであった。後者は小さなホテルだったが、朝食後の食堂に水を汲みにいくと*2道中のおやつとして1個か2個持たせてくれた。

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1度目のことは、もう記憶が曖昧だ。
子供の頃に、静岡市清水区のパン屋にあった。従兄の家の近所の普通のパン屋だった。
当時としては珍しい、トングとトレイを使う焼き立てパンの個人店。マリトッツォではないけれど、同じような南フランス〜イタリアっぽい名前がついていた。
ジャムパンやクリームパンとは明らかに違うパンだったこと、叔父が好きで(せっかく選べるパン屋なのに)こればかり包んでもらっていたことを覚えている。
令和になる前に店はなくなってしまった。移転や暖簾分けなども無いようだ。

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南米でも清水区でも、どちらも形や味が少し違う。
今日のような丸いかたちではない。高く膨らんではいるけれども、少し細長かった。
そして生地にはドライフルーツやナッツが混ぜられていた。

ふわっとしたクリームに少し酸味があったことは、今回のマリトッツォ、そして南米や清水区の物に共通している。南米版においてはドライフルーツ*3が挟まれていたはずだ。

 

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とにかく、流行り物をはじめて食べたのに、構成や生地がすぐに推測できたのは過去の記憶があるからだろう。
食べはじめた時には、なんとなく懐かしい気分に、そして色々なことを思い出してからはその違いや思い出を辿りながらのおやつ時間だった。

 

 

ああ、旅に行きたい。
南米とはいわない。国内の近所でいいから、いつもと違う場所で過ごして、その土地のパンを食べて「おいしいけれど、まあ普通。でも特別だ」とか思いたいものだ。

 

*1:南仏、南米や地中海沿岸の国々からの移民を相手に、ちょっと変わったパンを扱う店。ブラジル食材店などで製造元として名前を見かける。

*2:ゴミ対策なのだろう、ペットボトルは捨てない。ホテルや店に言えば無料で継ぎ足してくれる。

*3:甘いだけの何か。アンゼリカっぽい。

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