子供の頃にお世話になった人が亡くなった。
10年ほど前に引っ越すまでは、ずっと近所の人だった。
いわゆる”お隣さん“というのか、家同士の交流が続いていた。両親と歳が近く、子供の年齢もほとんど同じで、僕にとっては幼馴染の家でもある。亡くなったのは、幼馴染の親にあたる人。
昨今の情勢に鑑み、人混みを避けて最後の挨拶に行ってきた。
不特定多数の人が入れかわり立ちかわり…とならないように、1家族ごとに訪問するスタイル。普段は広い民間葬儀場も、今日はひっそりとしていた。
ご家族とも、少し離れた位置での挨拶や世間話をする。
関東に引っ越した子供とその家族は、どう工夫しても葬儀に立ち会えないという。自分は冠婚葬祭に重きを置かない人間ではあるが、それでも聞いていて辛くなってしまった。流行病のせいで親の葬儀に出られないなんて、しかも感染者でもないのに。
亡くなった方の写真がパネルにしてたくさん貼られていた。
なかには、我が家が写っているものもある。僕たちと一緒に行った観光地やスキー場の写真もあった。
別に落ち込んではいない。
自分自身は、もう何年も会っていなかったのだ。どちらかといえば両親のほうが、この何年かは親しかった。寂しさと悲しさを抱えるほどの関係はない。
でもやはり、特別な気持ちになっている。普通に夕食を食べて、こうしてパソコンの前に座っていても、色々と昔のことを思い出してしまうのだ。