この前行った伊豆シャボテン公園について書く。
この私設動物園というか観光施設は、子供の頃に訪れた記憶がある。
幼稚園児の目でも「古びて残念な観光スポット」な印象だった。「伊豆高原っぽいなあ」とはさすがに思っていなかったはずだが、とにかく子供心に「時代遅れ」だと思っていたのだ。
動物がいる施設が古びていると、なんだか怖い。だから暗くて臭くて怖い場所として覚えていたのだろう。「伊豆の怖い場所」の代表格だった。
平成も後半になってから、このシャボテン公園が「良くなった」と話題になった。
かつての「アンディランド」が「iZoo」として成功したように、動物の飼育を丁寧にして、展示や広報に力を入れ、動物好きの鑑賞に堪える施設へと生まれ変わったのだという。動物園で働きたい若者からも人気、と何かの本で読んだ。
しかし伊豆半島、しかも伊豆高原である。
自分の住む土地からは、中途半端に遠い。泊まるほどの距離ではないけれど、これだけのために遠征するのも面倒。行けば数時間は滞在するだろうし、せっかくなので他の場所にも寄りたい。
そんな微妙な場所ではあったのだが、今回は家の用事や仕事との兼ね合いで、泊りがけで行くことができた。大人になって初めての訪問である。
とはいえ、当日は雨。
傘がいらない時間も多かったものの、分厚い雲のせいで暗く、そして見通しは悪い。
さらに冷たい風がびゅうびゅう吹いている。
伊豆シャボテン公園は明るく楽しいメキシコ風の観光施設なのに、なんだか「世界の終わり」みたいだった。
実際、チンパンジーやリスザルは、風を避けて小さく固まっていた。
小動物がぷるぷる震えている姿と違い、多少なりとも人間に近い動物が島に隔離されて*1縮こまっているのは、心が寒々しくなる光景だ。
鳥たちは意外と元気。少なくとも温室やバードケージの鳥は普段どおりのテンションだった。
とはいえ、屋外ではアヒルやガチョウが薄暗くなった野原でガアガアと鳴いていて、やはり寂寥感と異世界感が際立つ。
すぐ横では「荒原竜*2」を風よけに、鳩たちが身を寄せ合っている。この竜(?)の像を通ってサボテンもといシャボテンの温室に入れるのだけれど、通路には野生(?)のクマネズミが走り回っている。
このあたりの悪夢っぽさは、写真では伝わらない。
静岡県民にとっては、シャボテン公園のカピバラが温泉に浸かる風景が冬の定番ニュースではある。しかし今の季節は、まだ温泉は用意されていない。
温泉のある場所は立て看板などがあるだけで、これも寂しい。
カピバラ達はあちこちにいる。
餌として与えられた木や枝を一心不乱に食べていた。その、さりさりという音が「カピバラコーナー」では思う存分聞くことができる。
これは予想外に素敵な体験だった。図体がでかいのに、小型げっ歯類と同じ行動をしている。
他にも色々と楽しめた。
サボテンの展示は見事だったし、動物たちもかわいらしい。
最近SNSで人気のアリクイも、ばっちり見ることができた。レッサーパンダの餌やりも見物した。
ひたすらメキシカン・ポップスが流れるなか、ワラビーやペンギンを眺める経験なんて、他にできる場所を知らない。
そういった楽しい体験と同時に、視界の隅でゴキブリが這っていたり、今どき珍しいくらいに「動物を飼っています」な匂いがしたのは残念ではあった。正直言って「昔と変わらないじゃん」とさえ思ったものだ。
唐突に洞窟があったり、動物たちが「有料の餌」に貪欲すぎるのも興醒めではあった。とはいえ、昭和から続く観光施設らしさといえば、そのとおりかもしれない。
今の時代に適応した部分もあるけれど、昭和B級スポットの部分もモザイク状に残っている。
しかし総じて良い観光施設だと思う。
親子連れでも、デートでも楽しめるだろう。雨の日に1人で徘徊すると寂しい気持ちになってしまうけれど、雨の日に1人で徘徊する中年男性はそのような心境すら愉しめるので問題ない。
何か機会がなければ、自分だけでは再訪しない。
しかし、伊豆半島の東側、伊豆高原あたりで何処か?と問われたら候補に挙げる。それくらいには気に入っている。お土産にサボテン(シャボテン)も買えたし。