やけに前評判の良いノンフィクション映画「はりぼて」を観た。
確かに、抜群におもしろかった。
実際にあった、富山市の連鎖汚職事件を取材していたテレビ局が映像を繋げたもの。
だから登場人物も、普通の人達。
市議なんて、そのへんにいる「ちょっと威張っていて、気のいいおじさんとおじいさん」ばかりだ。有利なときのコミュニケーションは得意な男の人達。
みんな最初は、帳簿の矛盾などを突っぱねる。その翌日には、涙ながらに謝罪会見と辞職をする。このあたりはアメリカ映画によくある「事実を元にした物語」とは全く違う。なんというか、しょぼい。
野党で汚職を追求する議員さんは痴情のもつれみたいなトラブルで辞職しちゃう。与党議員に協力していた人達も、マイクを向けられるとしどろもどろになり、数分で白状してしまう。
誰も彼もが、妙に人間臭いのだった。田舎のおじさん達そのもの。
これで膿は出し切った!もう後ろ暗いところは全くありません!と仕切り直しをした次の場面で「○○議員 経費の不正使用で辞職」となる。
なかには疑惑の中で”生き残って”いる人もいる。
でも彼らも(言葉は横暴だが)決して強気一辺倒ではない。
例えば市長。「議会の問題だ。自分はコメントする立場ではない」と登場のたびに言う*1のだけれど、浅黒い顔には脂汗が浮かび、目はあちこちを彷徨う。
保守王国の富山市という「敵なし。自分達が常識」の土地で、ただテレビに取り上げられただけで瓦解する彼らの権力。
しかし主役たるテレビ局も最後までは追求できずに、もやっとした終わり方をする。
当たり前の話だが、これはノンフィクションである。テレビ局の取材映像を繋いで、演出に字幕と音楽を乗せただけ。
だからこそ、僕たちの社会のままならなさ、しょぼくれた世界が突きつけられる。
観終わったあとにタイトル「はりぼて」について考えてしまった。
何が「はりぼて」だったのか、今もまだわからない。
しかし経費の不正使用で市議会40人のうち14人が辞職とは、迷走どころの話ではない。事実は小説より奇なり、である。
まるで、発展途上国のオモシロどたばたニュースである。賄賂が当たり前の、ギラギラの金ネックレスとレイバンのサングラスをかけた軍服の「有力者」が登場しそうな話だ。でも、これは日本の実際にあった(今も進行中の)出来事。
そういえば自分も四国暮らしをしていた時は、市議や県議に関わる仕事もいくつか担当していたのだった。頼まれて選挙の決起集会に顔を出したこともある。
うんざりするような人達ばかりだった。
よく自民党の人たちが仲間内の集会でびっくりするような差別や偏見にまみれたトークをして周囲を盛り上げるが、市議や県議のレベルでも当たり前にそんな話をするので驚いたものだ。しかも、支持者でもない自分達(IT屋だったので、ずいぶんとラフな格好をした我々)の前で、である。
ああいう「他人への想像力を欠いたくらいのほうが強い世界」は、とても苦手だった。歳をとって来賓になれば、壇上でも居眠りができるくらいに無神経になれるのだろうが、僕はその境地には達せそうにない。
そんな、少し前のことを思い出した映画でもあった。
邦画では今年一番の映画になりそう。いやあ、本当に楽しい映画だった。
そんな今日のお昼ごはんは「アンアン ピザハウス」のミックスピザ。
苦手なピーマンだけ抜いてもらう。
すると、青みが一切ないミックスピザになる。ジャンクで単調な、昔ながらのピザだ。
でも僕は、この老舗の味を食べたくなると我慢ができない。
「今日はピザだ」ではない。もちろん「ピッツァだ」でもない。
「今日はアンアンのミックス・ピザだ」と決めた場合、他の食事は失敗である。たとえおいしくても、後悔が残る。
そういう種類の外食がいくつかある。
ピッツアではなくてピザなので、タバスコもしっかりと使う。
冗談みたいな量のチーズとサラミとエビとトマト、それに鶏むね肉が乗っている。タマネギなどもたっぷり使われているが、肉類のせいで薬味みたいに目立たない。
静岡市では、老婆でもこの6インチ(小サイズ)を食べる。
カップルで来て「2人で6インチを1枚」と注文することもできるが、基本的に非常識とされる。少なくとも店主は説得する。「6インチでは1人前ですよ」と。
しかし実際、最小サイズの6インチでも十分過ぎる量なのだ。僕は昼にこれを食べると、夕食の時でもお腹が空かない*2。
アンティークというか古道具の積もったような店。
雑誌「an-an」よりも昔からある「アンアン」。静岡市の宝である。次に僕の「アンアンのミックス・ピザ欲求」に火がつく時のためにも、どうか繁盛し続けて欲しい。
ちなみに僕の場合、飲み物は「プラム・エード」か水。知人は「絶対にコーラ」と言っていた。