故あって*1JR藤枝駅の北口側を徒歩で散策した。
良い運動にはなったが、今日もまだまだ暑い。自転車と違って爽快感に欠けるのもつらい。
しかし徒歩だからこそ、落ち着いて眺められる風景もある。人混みを避けて裏通りへと進んでいくと、前後左右に誰もいない瞬間すらある。遠くから東海道線の走る音が聞こえてくるのに、人間が視界にいない。
藤枝駅の駅前なんて、子供の頃から何度も行き来している。水商売の店が増えて書店が消え、つまらない街になった後も、用事があれば通ることはある。
なので、このあたりの「静岡県中部地方の郊外」には、もう何年も前から飽きていたのだった。田畑を埋め立てた後にできた新建材のアパートは、10年も20年も変わらない。古い雑居ビルは廃墟じみて、気の利いた店なんてひとつもない。
数年前なら、つまらない場所だなと思いながら通り過ぎただろう。
でも今日は意外と、その古びて寂れて汚い街が、なんとなく面白く見えたのだった。大きなカメラを持っていたら、レンズを向けていたと思う。
おそらくは、瀬戸内海沿いの街に住んだからだ。
四国での生活は、それこそ側溝からデパートの屋上まで、見どころばかりだった。どこに行っても情緒を感じることができた。
そういう「何を見ても違う!」という数年間を経たからこそ、この見慣れた、良くも悪くも自分の中でスタンダードな、つまらない静岡県中部地方郊外の裏通りも、「探検と発見」ができるようになったのだろう。
他の県でもそれなりの期間、住んでいたのだが、こういう再発見は無かった。
いつだって、静岡県中部の郊外はつまらなかった。飽き飽きしていた。
丁度いい具合に、「異国情緒」があったのだろう、あの四国生活は。
機序はわからないけれど、そう確信している。
さて、そのJR藤枝駅 北口商店街の果ての先、ルートイン藤枝のすぐ近くには、写真館がある。写真館ではあるが「琉球堂」の名のとおりに、沖縄物産の店でもある。
不思議な組み合わせだ。実際に「写真の現像はできるのでしょうか?」と聞くお客さんもいる。
乾物も調味料も、お菓子もある。布小物だって売っている。いわゆる沖縄物産店にあるものは、一通り揃っている。ランチタイムには沖縄そばだって食べられるし、モズクの天ぷらも、それからランチョンミートドッグ*2なんてものもある。
もちろん、ブルーシールアイスクリームだってある。
沖縄に行きたいけれど、沖縄が好きだからこそ気軽に遊びには行けない。そういう状況で僕ができる沖縄といえば、ブルーシールアイスクリームを食べることしかない。
ここまで「沖縄!」という気分なのに、注文したのはピスタチオ味。だって食べたかったのだ。塩ちんすこう味や、紫芋味は、また別の日に食べればいい。
ちょうど夕日が眩しくなって、少しだけ過ごしやすくなった時間。冷たいアイスもすぐに溶けてしまう暑さだけれど、ここまで歩いた甲斐があったというもの。おいしいし、嬉しいおやつだった。
圧縮麩とモズクを手土産に駅まで戻る。
数日ぶりの通り雨が降ってきた頃には、車に乗ることができた。
そんな1日。藤枝駅北口周辺の散策では、求めていたものは見つからなかったけれど、アイスのせいで充実した気分。今日はもう寝る。明日またがんばる。