坂出市にある「四谷シモン人形館 淡翁荘」が再開したので、行ってみた。
四谷シモン氏の人形は「自分の好きな様々なジャンルに食い込んでくるけれど、それ自体は趣味というほど好きではない」のだが、県内で実物が見られるのなら行くしかない。僕の住む高松市からは車であっという間の隣市ではあるが、行こう行こうと先延ばしにしているうちに新型コロナウイルス禍で休業になってしまったのだ。
坂出の街そのものは、何度も行っている。仕事で関わった場所も多いし、古い商店街を散策するのも好きだ。
特に今の時期は、坂出の商店街は
- アーケード完備で日陰
- 人が少ない
という2点において、暇潰しの散策に向いている。
気がつくと前にも後ろにも人がいない、でもBGM(10年前のJ-Pop)が流れていて、いくつかのお店は開いている、という白昼夢じみた状況が楽しめる。
そんな商店街の片隅に、四谷シモン人形館はある。
香川では最も有名な醤油メーカー「鎌田醤油」の本社工場に隣接した、駐車場完備の小さな美術館だ。展示品は四谷シモン氏の人形だけ。
というか、この鎌田醤油の社長だか会長だかが、彼のファンでコレクターでパトロンであった縁で、「お屋敷=淡翁荘」をまるごと人形館という美術館に仕立て上げたのが、この場所である*1。
だから建物は、おそろしく豪華だ。
いかにも昔のお金持ちの屋敷という感じがする。応接間には暖炉があり、家具も調度も磨き込まれていて、まるでNHKのドラマに出てきそうな雰囲気。
今はその館のあちこちに、氏の人形が展示されている。
展示方法もユニークだった。
普通にガラスケースに収まっているものも多い。とはいえ、素晴らしいソファやチェアのすぐ横に、あの人形が立っているのである。不思議としか言いようがない風景になっている。
そして、元が屋敷なので扉も多い。廊下の物入れ、トイレや風呂場や書斎、そして金庫室の扉を開けると、そこにも人形たちがいる。「この先には人形はいません」という札が無い場所は、基本的に展示品がある。
この「探索」する感じが面白い。
人に近いが人ではないものが、扉の向こう側に佇んでいるのだ。瀬戸内国際芸術祭にありそうな、しかしもっと手のこんだ*2豪華な異界だ。
最初に書いたように、四谷シモン氏の人形、球体関節人形やドールの世界は、自分の趣味そのものでは無かった。でもこの館は本当に好きだ。何人か「こういうの好きそう」な友人を連れて行きたいし、叶うことなら夜にも入館したい。
たった500円でこんな異世界を存分に楽しめて良かったのか。
今日は完全に貸し切り状態だった。
企業の私設美術館ということで、なかなかアナウンスが足りていないからこそ、そして県外からの来訪者が皆無だからこその「独り占め」だったのだろう。
スタッフの方の親切な説明も、とても良かった。
まだ他県の人に「じゃんじゃん来てください」とも言えないが、本当におすすめの場所。古い建物好き、例えば京都の大山崎山荘美術館などが好きな人も楽しめると思う。広い建物ではないが、ずいぶん長い時間を楽しんでしまった。
お昼はこの人形館から徒歩数分のところにある「どんや」で食べた。
ちょっと入るのに勇気がいる古い店だが、普通にフレンドリーな「街の食堂」である。
うどん、そば、そして押し寿司といなり寿司*3がメニューにある。小学校の時に
- 赤:身体を作る食べ物(蛋白質を多く含む食品)
- 緑:身体を整える食べ物(ビタミン・ミネラルを多く含む食品)
- 黄:身体を動かす食べ物(エネルギー源となる食品)
のうち、「黄色」のみで構成しているストロングなスタイルの店である。
しかも、押し寿司が大きい。僕が普段使っているお茶碗と縦横がほぼ同じ、ということは「半球<直方体」ということで、明らかに押し寿司だけで一食分である。
なので今回は、うどんがおかず。小麦粉は植物、ネギも生姜もついている。
こんな炭水化物ウィズ炭水化物な食事ではあるが、うどんはつるっとしてコシもあるし、押し寿司のエビや穴子もうれしい。こういう「西の食べ物」も、あと少しでお別れとなると、少しさみしくなる。
夕方には、あの有名な「坂出人口土地」に隣接した喫茶店(サザンクロス)でコーヒーを飲んだ。ドーナツも食べて、満足に満足が重なって大満足である。
それではおやすみなさい。
明日は引っ越しの見積もりが来る予定。色々あって、いま部屋が壊滅的に散らかっているので、明日の午前中に片付けなければ。今のままだと「ゴミ屋敷の強制片付け」になってしまう。