さよならの挨拶と、県外ナンバーを咎められたことと、自衛隊の車両と、その他の雑務。

書類上の退職日。

職場に行き、挨拶とロッカーの片付けをする。
支店のリーダーである人とは、結局顔を合わせることができなかった。
会社全体でも特異な技能と思想の持ち主で、かなり好き勝手に動いているらしい。なにしろ僕が彼の姿を見ていない理由が「勝手にリモートワークをしているから」である。
潔癖症や心配性というよりも、「自分はリモートワークができる。そして今は、できる人間の対策として自宅隔離をしておくことが、会社と自分の利益となる」と考えての行動らしい。
社長以下役員も、彼の行動には文句しか言えない。なかなか格好良い仕事っぷりだと思う。
その人とは電話で挨拶をした。「辞めるのも当然だ。君の選択を尊重する」という、一風変わった、しかし暖かい言葉をいただいた。

昼前に、本社の事務員さんから電話があった。
会長さんの言葉を伝えるとのこと。
「いきなり辞めると会社として大迷惑だ。考え直せば迎え入れてやる」という。

なぜかこの会社は、こういう「下っ端を介した意思疎通」があるのだ。なにかの実務的なやりとりの時に、目上の人が「これも伝えて」と声をかける。
僕も先輩社員の「意見具申」を社長に伝えたことがあった。寮を出る時には「独身寮の衛生状態には何ら問題は無いと考える」と、寮の先住者から社長に伝えるよう依頼された。

とはいえ、会長はもう、実務的な力は無い老人であり、ほぼ「朝礼係」である。
例えば僕がこの言葉を受け、社長に電話して「会長に慰留されたので、やはり辞めません。明日からがんばります」と言っても、却下されるだろう。もちろん僕にそんな気は無いし。
なので事務員さんも、メモを読み上げるように伝えたあとに「それで、離職票のことですが…」と、手続きの話へと話が変わった。

自分としてはとても助かる。「形式的でもいいから、いま返答しろ」とか言われたら「やだプー」とか電話口で言わなければならない。しかも事務員さんを介して。中年男性として、それは避けたい。
だから心の中で「やだプー」と唱えるに留められたことは、本当によかった。紳士でいることができた。

 

猫を棄てる 父親について語るとき

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退職してからの行政手続きに関しては、今日は電話による相談のみ。
書類が揃っていないし、なにしろ役所が忙しいらしい。
明日に職業安定所などへ顔を出すことになった。
まず電話相談をした事を感謝された。それくらい多忙なのだろう。

 

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郵便局の駐車場では、県外ナンバーということで、知らない老人から、ちょっとした文句を言われた。なぜ県外の人間がここにいるのか、という意味の讃岐言葉を投げつけられた。
四国に住んで長いことを伝えたら、なにかぶつぶつ言いながら帰ってしまった。

 

喘息になって寮を出ることになったとき、「そんな体質なんて聞いたことがない。寮暮らしが嫌なだけの嘘つきだ。喘息で会社に迷惑をかけるとは無責任だ」と、寮の人に怒鳴られた。
数週間前には、通院で休んだ時に(今日辞めた会社の)社長は、ひたすら「新型コロナ陽性か?」ばかり聞いてきた。

昨日、辞めるために電話したときも、社長は「コロナじゃないよな」が第一声だった。

今日の老人も、社長も、それからたぶん寮の人も、ただ病気に対する知識不足と素朴な危機感に正直なだけなのだと思う。
でもそれが差別の第一歩、「あいつが怪しい」から「あいつが悪い」に繋がる道だと思っている。

知らない人に乱暴な言葉で話しかける老人なんて、正直なところ「そういう人もいるよね」としか思わない。むしろ、他人のナンバープレートで感情が乱されるなんて、気の毒な心理状態だとさえ思う。

 


でも、このギスギスした感じは嫌だ。嫌と言ってもウイルスには届かないが、でも人間には届くかもしれないので、ここには書いておく。

 

 

 

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そういえば街のホテルが、新型コロナウイルスの無症状感染者の一時滞在施設になるそうだ。自衛隊の車や、医療関係者(たいていVネックの服を着ている)や、いかにも役所の人が集まっていた。
彼らこそ最前線で戦う専門家だ。心強いし、出来ることならばサポートをしたい気分。

 

戦場のコックたち (創元推理文庫)

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お題「気分転換」

 

お題「#おうち時間