さようなら仕事、ようこそ健康

ご報告。
就いたばかりの仕事を辞めた。
書類上は今週末で終わり。出勤は今日まで。

 

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資格は取ったが実務経験が皆無な自分を採用し、ある程度の教育までしてくれるという稀有な会社ではあった。ただしそれは「資格持ち素人の足元を見て使い倒す会社」のいち側面でもある。そして自分も、いくぶんはそのことを承知で入社を決めた。
つまり、「実務経験」を身につけ、失業手当が貰える期間まで勤続した後に、次の仕事を探そうと目論んでいたのだ。
もちろん水が合って、長くこの会社に居ることになれば、それはそれで喜ばしい。

でも入社して早々に、長くいることは無理だろうという確信を得てしまった。

それは先々週まで日記に書いていた、衛生状態の悪い独身寮のことが大きな理由のひとつ。ああいう場所を放置して平気な会社は、どんなに立派な社訓を掲げても説得力が無い。

朝礼から退社に至る本社の奇妙な雰囲気(有給休暇を取った社員は、朝礼で全員に謝罪する風習がある。罪は無いのに、である*1。)も馴染めなかった。

長く勤続しても給料はほとんど上がらないと先輩社員に聞いた。スキルアップはそのまま仕事量アップになるだけだ、とも。

この時代に、毎日の残業も当たり前になっていた。
「我が社は実力主義だから」と社長は繰り返していたが、しかし仕事量の管理能力は誰の実力にも含まれていない。
これは1人の人間を安く使い倒す会社ということである。

丸一日パソコンに向かって仕事をしているのに、このご時世にリモートワークはおろか、最低限の「業務を効率化するツール」を導入しない、むしろ嫌がっていることも気になった。
FAXと、いわゆる「ネ申エクセル」の印刷物と、メール専用パソコンでの代表メールが、この会社のネットワークツールだった。ぽーんとメール専用パソコン*2から通知音がすると、事務のおばさんがOutlook Expressを見て「○○さんにメールでーす」と呼ぶのだ。思い返すと、共有のネットワークドライブが活用されていたのが奇跡に思える。
最初に与えられたパソコンなど、インターネットに繋がっていないので、仕事の調べ物すらできなかった。

全体的に「人を大切にしない会社」という印象は日を追うごとに高まっていった。
人への態度だけではない。「より良く働こう」という意思が潰された跡があちこちに見られる組織は、働く人間を部品としか考えていないのと同じだ。

 

それでも先週前半は、まだまだこの会社で頑張る気でいた。
本社はともかく、香川の職場は管理職不在の小さな事務所だったので、のんびりもしていたし、皆とても親切だった。こんな雰囲気なら、非効率で低収益でも、ぼんやりと働くのも悪くないな、とさえ思える時があった*3

 

 

猫になりたい

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状況が変わったのは「新型コロナウイルス対策による緊急事態宣言」が全国に広まった頃からだ。

ある日から、明らかに「新人はお荷物」という扱いになった。
新人用の課題を本社の教育担当者に提出した後のやり取りが、おそろしくぞんざいになった。
数ヶ月かかると言っていた教育を、あと1週間で終えるよう求められた。
質問することが「怠慢」と見做されるようになった。

誰かが具体的に命令した訳ではない、と思っている。
しかし社長と教育担当周辺が会社の現状・自身の安全を考えて、ここ数ヶ月に雇った人間を「あわよくば自主退社させよう」と方針変更した雰囲気が露骨に感じられた。

年長者である僕に対しては、様々な立場の人が、親切から警告まで様々な意図による「会社の都合」を伝えてきた。

そんな状況なので、僕と一緒に入社した若者は、たった数日でメンタルヘルスに問題が生じ、今日は病院へ行った。
自分だって、この前の土日は、ずっと頭の中で仕事のことを考えて、頭が重かった。

 

かつて心身を壊したときのことを思い出すと、このまま続けるのはまずいと判断せざるを得ない。次の転職までに磨り減ってしまう。

当初の目論見よりは早いし、この恐ろしいまでの就職難*4に仕事を辞めるのは、悪手だったかもしれない。

しかし自分にとって、自身の健康は日々の収入よりも、ささやかなキャリアプランよりも大切なものなのだ。いちど身体を壊した人間としての、明確で切実な基本方針。

その基本方針だけを以て、今日は退職を決意した。
迷いながらも社長へと連絡し、辞意を伝えた*5

 

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僕に続いて同期の若者も退職届を出した。

会社は認めないであろう「新型コロナによる雇い止め」に準ずる支援を行政から受けるべく、情報はきちんと保存し、この同期とも共有した*6
明日以降、きちんと整理して、行政機関に求められた時には提出するつもりだ。

別に会社と喧嘩をするつもりはない。
裁判も告発もしないだろう。
でも無法を許すほど弱くもないことは、会社に関わった人間として示していく。
良し悪しではなく責任として。そして何より、自分の身を守るために、損をし続けないために。


もはやこの会社の文化が当たり前となった、あるいは変化を諦めている、お世話になった諸先輩への、せめてもの「社会人としてできること」でもある。

 

 

いやあそれにしても酷い会社だった。
本社への往復やら寮暮らしの準備まで考えたら、金銭的にはマイナスかもしれない。
時間と心と身体に関しては大赤字だろう。人生のつまづき、と言っても過言ではない。
次に書く履歴書では「いや実は、あのコロナの影響で…」と説明しよう。

 

いついつまでも

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しかし、なにはともあれ、今日でその酷い会社から開放されたわけだ。
夕方には退職届も投函してきた。

ポストに退職届を出した帰り道、なんだか久しぶりに、猛烈にお腹が空いてきた。
帰宅して、根菜と高野豆腐で「けんちん汁」の亜種を作り、お餅を2個焼いて、即席のお雑煮にして食べた。
普段、お餅を2個は食べない。1個で十分。
今日は高揚していたのだろうか。それとも、お腹の変な緊張が解けたのかもしれない。とにかくここまで急激な空腹感は珍しかった。食事を抜いた時とは別の感じがした。

これならもう少し豪華が外食でもすれば良かったかな、とは思う。
しかし、しばらくは節約生活である。老後用の貯金は温存しておかなければ。
この地味な「けんちん雑煮」は、仕事を辞めた日の晩餐としては、ぴったりだったかもしれない*7

先ほど、身体を壊して病院に行った”同期”の若者から連絡があった。その子も今日は、しっかりと(いつも以上に)ご飯を食べることができたという。
何よりである。

 

ブラック職場があなたを殺す

ブラック職場があなたを殺す

 

お題「気分転換」

お題「わたしの癒やし」

 

*1:有給休暇の際に公の場で謝ってはならない、とルール化された企業にでしか働いたことが無かったので、いささか面食らった。もちろん仕事に穴を空けたら同僚や上司に「昨日はすみませんでした」くらいは言うが、しかし有給も含めて会社というシステムなので、謝罪はおかしい。

*2:Microsoftが見たら怒りそうな古いWindowsだった。

*3:会社が潰れる恐れはあるけれど。

*4:2月から比べると、自分の就きたい業種でいえば、ハローワークの募集票は1/4以下になった。

*5:離職率の高い会社なので、その後の手続きはとても早かった。ただし「会社の悪口はネットに書くな」と言われた。なので会社名は書かないし、この日記の内容もいくぶんダミー情報が混ぜてある。
落ち着いたら就職情報サイトには偽名で書くけれど。

*6:僕はそういう作業が得意なのだ。昔とった杵柄は有効活用する方針。

*7:副菜は小松菜のおひたし、切ったトマトと青紫蘇。