警報の朝

朝食の準備をしている時に、アパートの火災報知器が鳴り出した。
室内なら聞き慣れない異音程度だが、廊下に出るとジリジリと大きな音がする。子供の頃は、1年に1回くらい点検でこの音を聞いた。

とりあえず外からアパート全体を眺めてみたが、特に炎も煙も出ていない。煙や熱の検知器を作動させた住人が対応するだろう、と部屋に戻ってしばらくはお弁当などを作っていたが、ブザー(サイレン?)の音は一向に止まない。

廊下にあった制御盤で外部向けの音*1だけ一時停止して、消防署に通報した。
制御盤では3階が“火元”と出ている。僕の住む階とは違うが、でも放っておくわけにもいかない。誰かが煙を吸って倒れていて、でも外にまではその煙が漏れていないのかもしれない。

その後は、消防車を敷地に誘導して、状況を説明して、ついでに管理会社にも連絡をしてと、朝の忙しい時間がさらに忙しくなった。

3階のある部屋で、検知器を壊してしまった事が今回の騒動の原因らしい。さらに言うと、完全禁煙のアパートでこっそり喫煙していた事も判明したが、それはまた別の話。
煙草の煙でセンサーが作動し、止めようと棒で突いてセンサーを壊し、どうしようも無くなってしまった、と消防署員は言っていた*2

原因の部屋の人はそれほど深刻に捉えていなかったようで、管理会社や大家や警備会社への連絡をとても嫌がっていた。
消防との簡単な書類(サインだけ)は渋々認めたが、他の細々とした連絡や状況報告は第一通報者である僕が済ませた*3
これで一応は一件落着。

しかし火災報知器が鳴っているのに、何も行動しない人がいるなんて、僕には信じられない。出勤のために外に出た人も多いのに、誰一人として制御盤の確認も、連絡も通報もしていないのだ。
検知器を壊した当人でさえも、だ。

僕だって最初は何の音かわからなかった。
室内にいる限りは「変な音が聞こえてくるなあ。うるさいなあ」という程度なのだ。廊下に出れば火災報知器のランプが点滅して、かなりうるさい。
そんな時にどうすればいいのか、実は忘れていた。119に電話するのは大袈裟だろうか、と最初は考えて、入居時に貰ったマニュアルを読み返して、ようやく行動できたくらいだ。
たぶん他の入居者も僕と同じくらいに無知で、危機感も薄かったと思う。なんだか変な音がするなあ、と廊下に出て、報知器のランプとブザー音に驚いて、アパートの全体を眺めて「たぶん火事ではないだろう」と確認したと思う。でも、それだけだ。「入居者のしおり」も読まず、管理会社の24時間ヘルプデスクにも電話をしない(火災報知器には書かれているのに)。

NHKなら「無関心社会」と呼ぶだろう。
しかしこんな田舎で、今さら現代人の孤独もあるまい。
もっと単純な、想像力の欠如が“当たり前”になってきているように僕には思える。同じアパートで何かしらのトラブルが発生しているかもしれない、それは火災に関わる事なので、万が一にも誰かが酷い事になっているのかもしれない、そう考えず、ぼんやりできてしまう人が多すぎるのだ。
少し前に、新宿か渋谷で自殺未遂事件があった時に、多くの人が携帯電話を向けて写真を撮っていた。あれも同種の、想像力が欠けた行動だと思う。

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仕事の場では、この想像力を働かせる事をまず教える。
仕事仲間が何を欲しているのか考えさせ、情報を集めさせ(たいていマニュアルがある)、ぼんやりしている暇は無いのだとわからせる。仕事の知識や技術を身に着けさせる事と同じくらいに、人が協力して働いていることを実感させる。

腹が立った訳ではない。
アパートの管理会社の人達も、駆けつけてくれた消防署員も、僕の行動を認めてくれた*4。昼休みにこの事を話したら、多くの人が同情してくれた。

僕はこういう事では怒らない。ただとても残念で、寂しくなってしまった。だって僕がいつかこのアパートで煙に巻かれて倒れた時に、誰も助けてくれないのだから。立ち話もできないくらいに大きな音が鳴っていて、近所の人達も敷地を覗き込んでいる状況で、朝は忙しいからと見捨てられてしまう。そういう場所に住むという事は、とても寂しいと思う。

 

オールド・テロリスト

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夏物語

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ともあれ朝のどたばたは別として、平穏な1日だった。
お弁当はこんな感じ。消防車が現場検証(?)をしていても、お弁当はつくらなくてはならない。でも今日くらいは、街のウドン屋さんで済ませても良かったかなあ、と後悔している。休日に下調べしていく讃岐うどん屋も良いけれど、普段にふらっと入る普通の讃岐うどんライフにも憧れているのだ。

https://www.instagram.com/p/B79_ccXJ0eK/

  • 緑豆ごはん
  • 割干し大根の漬物
  • レバー塩煮
  • 安納芋のシナモン煮
  • ジャガイモのサブジ
  • キャベツのクミン和え
  • 春菊レモン和え

和えてばかりのおかず。健康には良さそうである。別に凝っているわけではないけれど、ハーブとスパイスを使ったものが多い。1回の加熱と調味、醤油以外の味付け、数日の保存に耐えること、といった条件を簡単に満たすためには、ハーブやスパイスはとても便利だ。ちょうど生姜やネギを切らしていたことも理由のひとつ。

 

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それでは寝ます。
明日の朝は静かであって欲しい。
しかしなあ、社会の共用部分で他人任せの人が多い気がするなあ。祖父母の時代ほど堅苦しく“世間様”や“お天道様”を気にしてリソースを割くのは面倒だとは思うけれど、全てを善意の他人任せでは逆に皆が損をする気がするのだがなあ。怒っているわけではないのだけどなあ。

 

 

 

お題「どうしても言いたい!」

お題「これって私だけ?」

 

*1:地域全体に危険を知らせるために鳴らすらしい。

*2:当然のことながら、壊れたら警報が鳴り続ける仕組みになっている。逆では非常時に困ったことになる。

*3:煙検知器を壊した人は、速やかに修理をする法的義務がある。でも今日の態度では、そんな事には興味が無さそうだった。消防隊員もそれを気にしていた。僕が大家や管理会社への連絡を代行したのも、今後そのあたりがなあなあになってしまったらアパート全体の安全度が下がるからだ。下手をすると大家や管理会社にこの件が伝わらない可能性だってあったのだ。

*4:消防隊員達は、何もしない「報知器を作動させた部屋の住人たち」に怒っていたようだ。彼らは僕よりも真剣なのだ。