帰宅してから冷蔵庫の掃除をした。
冷凍庫の奥から、昨年に行ったガラパゴス諸島で買ったコーヒー豆が出てきたので淹れてみたところ、予想外に美味しい。
ガラパゴス諸島(エクアドル)は、南米ラテン文化の土地。だからコーヒーは深煎り。エスプレッソマシンも多かった。濃くて苦いコーヒーが基本。
庶民も観光客も利用する小さなスーパーマーケットで買ったコーヒー豆は、一応は観光土産だが街の人も買っていた安いもの。帰国してから飲んでみたけれど、その時はさほど感心しなかった。普通に美味しい、といった程度。日常使いでがぶがぶ飲んで、一部は友人達へ渡して、すっかり忘れてしまった。
ガラパゴス諸島は赤道直下、でもそれなりに標高差があって、しかも絶海の孤島でもある。だから島の一部が砂漠、でもその反対側は涼しくて雨が多い、といった滅茶苦茶な気候となっている。その湿潤な側にコーヒーが植えられているのだ。
そしてガラパゴス諸島のコーヒーは「ゾウガメ・コーヒー」でもある。これはゾウガメの糞を肥料に育てられた、ということらしい。しかしゾウガメはどんな場所でも出入り自由*1で、コーヒー農園でも暮らしていて、食事も排泄もするので、それで「ゾウガメ・コーヒー」を名乗れるのだ。「オリーブハマチ」のような人為的なものではない。そもそもコーヒー園といっても、巨大なサボテンや木のように育った菊の仲間、棘だらけの多肉植物と一緒にコーヒーの木が植わっている、半分は原生林だった。
ともかくこの深煎りの(そして欠けた豆や小さな豆も混じっている)安っぽいコーヒーが、1年と10日くらい冷凍庫に寝かせてみたら、味ががらりと変わっていたのだ。
濃いめの甘み、ココアのような油っぽさ。焙煎度合いに似合わず酸味もある。今まで手で挽いていて、今回は実家から持ってきた電動コーヒーミルを使ったけれど、それほど違いは無いはず。

DOUTOR LOVERS 愛されるセルフカフェ (CASA BOOKS)
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何か不思議な熟成が冷凍庫の奥で進行していたのかもしれない。
コーヒーについてはよくわからないことが多い。
そもそもコーヒーのブームは何度も来ていて、今も専門店に行けば薀蓄をいくらでも聞くことができるけれど、きちんとした分析付きのセオリーというものがまるで定まっていない世界なのだ。
よく料理の世界と比較されるが、コーヒー界は各人やお店が勝手に薀蓄を語り合うだけで、体系化され共有される基本の知識は本当に少ない。焙煎した豆はすぐに淹れたほうがいいのか、しばらく置いたほうがいいのか、置くのならどれくらいか、そういった事も人や本や店によって定まっていない。
かつて仕事で関わったインスタントコーヒー会社*2の人達も「企業内では分析をしているが外に出してもウケない。コーヒーと焼酎と化粧品は、ユーザーが理論を求めない。薀蓄さえあればいい」と言っていた。
「カーサ・ブルータス」などのコーヒー特集も、わりと勝手なことを書いている。
もちろん「それぞれのやり方があっていい。お互いに尊重しよう」というのも素敵な世界ではある。しかし、鹿女面をして普段からリクツっぽい事を語り合っているマニア達が、実は理論的な軸も共有できていないというのは、なんともつまらない。より良いものを目指すふりをしながら安全地帯でのんびりしているようにも見える。
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そんなわけで、今回のこの味の激変も、どのような理由によるものかはわからないまま。
自分の暮らしだけに着目すれば、美味しければそれでいいので全然かまわない。どうせ買い足すこともできない豆と、そう簡単に再訪できない土地なのだから。
とはいえガラパゴス諸島、いずれ再訪したいとは考えている。旅の直後は「もうお腹いっぱい。同じお金と時間を使うのなら他の土地に行きたい」と思えたのだが、今はちょっと違う気持ち。これは瀬戸内国際芸術祭2016の後の四国や瀬戸内海と同じ気持ちであるから、いつかうっかりガラパゴス諸島に住むことになるかもしれない。
人生は一寸先は多島海だ。

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さて今日のお昼ごはんはこんな感じ。これが今の日常。
- 五穀米ごはん
- 肉団子(カレー味)
- 青菜と油揚げの煮浸し
- 人参のスパイス和え
- リンゴのコンポート
わりと綺麗に、作りおきのおかずを使い切った。
肉団子は、前に作って冷凍しておいたトマト味の豆カレーをまぶしてみた(カレーは朝ごはんに食べた)。カレーライス弁当への布石。食べる前に電子レンジを使うことで、お弁当でもカレーが喫食可能と判断した。

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