アニメ映画『空の青さを知る人よ』を観た。
外出するつもりは無かったのだが台風の影響が午前中には弱まって、さてどうしようと考えた、そのタイミングで知り合いから映画の誘いがあったのだ。
仕事でたまに顔を合わせるだけの人だったが、以前『心が叫びたがってるんだ』の話をしたのを覚えていてくれた。
かなり徹底したオタクの人であるが、年齢も離れ性別も違う、普段はSNSで近況を知る程度の間柄なのにこうして(アニメ映画鑑賞に限定して)気楽に声をかけてくれるのは“新世代のオタク”らしさがある。僕の知る(同年代の)オタクの人達は、ここまで徹底した「趣味に限定したファイアウォールの解除」ができない。
でも本当に有り難い事である。だから入場特典のクリアフォルダー*1は進呈した。
素敵な映画だった。
『心が叫びたがってるんだ。』と『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない*2』のスタッフが手掛ける3作目。この3作は、秩父の田舎町を舞台にしている、という以外は共通項はほとんど無いが、どれも切なくて愛おしい、若者たちの群像劇となっている。
劇中で「汚いおっさんになってしまったかつての若者」でさえ自分より年下であることもあって、映画を観ていて感情移入する事は無い。でも存分に感動したし、泣けそうな場面では泣きそうだった。感情移入ではなく「見事だなあ」と思いながらスタッフロールまで夢中になっていた。
想いを封じて、あるいは叶わないまま別れる事になった若者たち。田舎から逃げ出したい少女。負い目と、理想とは違う現状。この辺りは脚本家「岡田麿里」氏の得意とするところだ。
物語の序盤で、ある種の幽霊が登場してから話が動き始める。幽霊というのは大抵が「ある時間に囚われて動けなくなってしまった想い」であり、この作品でもそれは変わらない。
短めの作品だからか、物語が動くきっかけになる事件のそれぞれはいささか唐突ではあった。でもそれすら、小気味よく話が進むため心地よい。物語の終わり方、ラストシーンの切り方などは本当に感動した。
総じて高品質で、良いところが多く、手放しで楽しめる作品だった。
周りの中高生は、だばだばと泣いていた。僕だってあと10年若くて、一人で観ていたら、泣いていただろう。
ベースを弾きたくなる作品でもある。でも生憎、実家に置いてきたのだった。
ちなみに「井の中の蛙大海を知らず、ただ空の青さを知る」という言葉は僕も好き。初めに知ったのは中学時代。上手い付け足しをするものだ、と思った事も、そのときの状況も覚えている。
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ところでこの映画、最初は観る気は無かった*3。ただ脚本の「岡田麿里」氏が書いた自伝が印象に残っていたのだった。小中高と不登校だったという。物語の寵児みたいな人だ。ちょっと癖のある、でも王道の物語が多い。監督や脚本家や俳優をさっぱり覚えられない自分だが、この人は信頼している。自伝だからどこまで本当なのかわからないけれど(物語みたいな人生なのです)文章が巧くて“読ませる”本だった。
万人向けではないけれど、おすすめの本。