東かがわ市にある「しろとり動物園」に行った。
まだ暑いとはいえ、8月前半の暴力的な気温と日照に比べたら幾分か過ごしやすくなってきた。昨日今日と、曇天ときどき雷雨の可能性、という天気が続いているのでチャンス到来と動物園に行くことにしたのだ。
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四国は動物園も水族館も少ない。
「しろとり動物園」は、株式会社白鳥動物園が経営する小さな民営動物園。なんとなく、静岡県掛川市の「花鳥園」を思い出す。
海が近い山に向かって細い道を(不安になりながら)進んでいくと入口が現れる。ゲートもなく簡素な駐車場が山道にあるだけ。
溜池があちこちにある低い山の一部が敷地になっているのは、香川らしさがある。
正直なところ充実した設備とはいい難い。
爬虫類の展示はプレハブ小屋、案内表示は不十分、斜面が多いのに舗装だってしていない。あちこちに描かれたペンキ絵は剥げかているし、スタッフの道具は見えるところに散らばっている。
子供の頃に、伊豆あたりに旅行に行くと、こういう動物園や水族館や博物館、あるいは見世物小屋のような、子供心にもの悲しくなる施設があった*1。スピーカーからは商店街みたいにポップソングが空虚に流れ、動物の糞尿や何かが腐った臭いが漂い、土産物コーナーには見るべきものがひとつもない。そういう場所なのかな、と最初は思った。
だって最初に出くわしたのがヨークシャーテリアだったから。
その後にポニー、そしてヤギ。ネコもいた。
しかし料金を払い*2中に入ると、きちんと楽しい施設だとわかる。というか、ここはかなり楽しい動物園だ。
入場時に小さな餌を1袋渡される。動物用の配合飼料、見た目はクッキーに似ている。これはサルやゾウ、ヤギなどに与えることができる。
それからあちこちに、切った野菜やフルーツなど、様々な餌がバケツに入って置かれている。多くは無人販売。100円程度と安いのが嬉しい。
大型肉食獣やカバといった例外はあるが、ほとんどの動物に何かしらの餌やりができる。大人しい生き物には触ることだってできるし、頻繁に飼育員の餌やりイベントも行われている。
餌こそあげられないけれど、アゴヒゲトカゲやセンザンコウに触ることだってできる。リクガメも脱柵してその辺を歩いている。
つまり、他の動物園における「ちびっこエリア:ふれあい動物園」を全域に拡張したような場所なのだ、このしろとり動物園は。
ヒヨコやウサギといった、本当に子供向けの生き物もいる。ここでは大人も子供もにこにこと餌を動物に与えて楽しんでいる。
ウサギに関しては道にもその辺の薮にもいて、客が落とした餌を狙う「Scavenger」としてのニッチを占めているくらいだ。人慣れしていてとてもかわいらしい。
さらにヤギやリスザルの子供なども柵を通り抜けて人間の近くにまでやってくる。人と動物との距離が近い、といえば大阪の「ニフレル」を思い浮かべるが、あれを四国の山の中に(観光牧場レベルの清潔感にして)持ってきたら近いかもしれない。
ゾウやキリンにさえ餌を与えることができる。
ゾウなんて係員すらいない。柵のところで餌を掲げると、鼻を伸ばして掴んでいく。慣れたもので、小さな餌でも器用に掴む。
ゾウの鼻先に触れたのは、人生初だった。ぬるっとして柔らかく、でもごわごわもしていた。
ちなみにキリンの舌は、熱くてよく動く。一瞬で刻んだニンジンを全て持ってかれてしまった。
というわけで、他に無い、唯一無二の動物園だった。
難点は大型肉食動物舎だろうか。
パンフレットなどにはホワイトタイガーやベンガルタイガーが大きく掲載されている。でも彼らがいるのは、昔ながらの暗くて狭い部屋で、太い鉄の檻のせいもあってよく見えない。トラもライオンもたくさんいたのに、楽しく見る雰囲気ではなかった。
敷地の端のほうに行くと、鹿やヤギのゾーンがある。リャマもカピバラもいる。こういう生き物たちを、きちんと見てもらいたいのかどうかよくわからない。案内表示も説明も不十分で、しかも入り組んだ山道だから多くの人が訪れない。これは勿体ないなあ、と思う。
しかしまあ、思い返せば自分が子供の頃の公立動物園だって、こんな感じだったような気もする。
きちんとしたデザイナーの手によるものか、あるいはスタッフの手作りかは別として、「しっかり見てもらおう」と動物園が工夫をし始めたのは平成になってからだ。
どうしても経済の規模が小さくなってしまう四国という土地で、ここまで頑張っているのだ。応援したい。
というか、もう少し過ごしやすくなったら、また行こうと考えている。展示生物が「動物」というよりも「ペット」に近い不思議な動物園。
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自分の好みからすれば、やはりもう少し真面目な、スタンダードな、そして可能ならば質も量も充実した動物園が四国にあれば嬉しい。
そういえば、香川のちびっ子にとっては、このしろとり動物園が「普通」なのだろうか*3。こんど友達のお子さんに会ったら聞いてみよう。
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