五色台を散策

 

肩こりが酷くなったのか、あるいは寝違えたのか、とにかく右肩周辺が張ってしまって下を向くのも横を見るのも辛かった。だからというわけではないけれど、午前中は寝たり読書したり、午後もまた昼寝をして過ごしていた。
少しだけ体調不良がある暇な休日、そのうえ気温も低く曇り空となると、こういう雑な時間の使い方になってしまう。読み途中の小説が滅法面白いことだけが救いの土曜日。

 

これじゃあだめやん、ということで16時頃にアパートを飛び出して、五色台へ向かう。仕事では通過するだけの古い景勝地といった土地だが(職場の人達も熱く語ることは皆無だ)、五色台の夕日については「 id:cimacox さん」が勧めてくれたので、いつか行こうと考えていた*1

cimacox.hatenablog.com

でもこんな寒い季節に行くものじゃない。
全体的にオフシーズンの寂しさが漂っていた。そして風が強くて寒い。

 

まずは「瀬戸内海歴史民俗資料館」に行ってみた。
建物が素晴らしい。賞をいくつも取っている、いかにも昭和のコンクリート名建築といったデザイン。というか高松市、こういう「ブルータルとまではいわないまでも力強いコンクリートの建物」が多過ぎると思う。僕は大好物なので会うたびに写真を撮っている。

この資料館は内容も本当に良かった。これが無料とは信じられない。
しかし施設としては完全に「お年寄りの職員だけで細々と低予算で運営していきます、なにしろ文化施設ですから」といった残念な雰囲気が感じられる。大阪の万博公園にもこういう博物館があった。

資料館については写真もあるし、色々と考えることもあったので、後日この日記に書くかもしれない。書かないかもしれない。とにかく良い場所でした。

 

 

屋上の展望台からの見晴らしも良いので、ドライブの途中に寄るのも良いのではないか。
ただし建物は寒い。外を歩く格好でちょうど良い。今の季節なら手袋が欲しい。

 

 

資料館から車で数分のところにある五色台の展望台、なんだかよくわからないままそれっぽい駐車場に停めて、潰れたのか冬期休業なのかこれもまたわからない売店たこ焼き屋)の脇を入ってしばし歩くと到着する。


ブレア・ウィッチ・プロジェクト的な怖さがある、静かで誰も通らない道を1人で歩くのは、夕暮れ迫る時間帯ということもあってなかなか面白い経験だった。


キツツキの類(名前はわからない)を何回も見た。イノシシか何かの通った後もある。マムシに注意、という看板もあった。


そして辿り着いた展望広場は、確かに良いところだった。
静かで、空が開けていて、遠くにうっすらと瀬戸大橋や小豆島が見える。

しかし種々の樹木が生い茂り、写真を撮るには苦労する。
ベンチも腐っていた。

 

夕日や風景という観点からすれば、帰り道の道路脇のほうがよほど良かった。瀬戸大橋もはっきり見えた。
五色台、確かに良い眺め。

 

 

展望広場からの帰路、駐車場に着いた時に、ちょっとヤンキーっぽい若者集団に声をかけられた。「この先、面白いんすかねーヤバいっすか?食いもん売ってます?」みたいなちょっと無礼な物言いだったので、「5分も歩けばすぐですよ。お店もあります」と、つい嘘をついてしまった。まあ、5分歩けばわかる嘘だから意味も害も無いだろう。

 

静岡に住んでいた時、こういう咄嗟の嘘がとても上手い友人がいた。
廃墟や寂れた観光地にミラーレス一眼やロシアのフィルムカメラを持って出かけるタイプの文系女子で、やはりそういう場所では「無礼なお兄ちゃん集団」に遭遇することもある。
「この先何があるんスかー、霊とか出るんすかー?」と騒がしい、いささか趣に欠ける連中には、つい次のような返答をしてしまうという。
「この先に展望台と売店がありました。歩いてもすぐそこですよ。踊る人がたくさんいました。ケツエキギンコウも大丈夫です、大丈夫です、すぐそこです。牛はいませんが伊豆半島がよく見えます」
涼しい顔で当たり前のように語るので*2、仲間内で盛り上がっている若者達は深く追求しない。そしてもちろん、展望台ではなくて寂れた東屋だけがあり売店は潰れていて、かなり歩く必要がある。
僕も何度か一緒に行動している時に、さらっと怖い嘘を言っているのを見たことがある。ライブイベントで声をかけてきたチョイ悪オヤジとか、書店のワークショップでマウンティングを取ろうとするおばさんに、さらっと言語的ウイルスを投げかけるのだった。

 

ネットロア: ウェブ時代の「ハナシ」の伝承

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たぶんネットロアや現代版フォークロアの多くは、彼女のような人達が発端なのだろう。
こうして世界は厚みを増していく。かつてのクウネルが掲げた「ストーリーのある物と暮らし」の実践ともいえる。
僕もこの人くらいの嘘がつけたらなあ、と思う。とりあえず「血液銀行」はいつか採り入れたい。高松の街を歩いていると、無礼なおじいさんによく道を聞かれるので*3

 

裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ (ハヤカワ文庫JA)

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さて今日はそんなわけで、ずいぶんと寒い思いをして、しかも帰り道にAEONに寄ったせいもあって、なんだか身体が冷えてしまった。
幸いなことに、肩こりは「コリホグス」が良く効いている。夜更かしするつもりだったけれど、明日を充実させるために今から寝ることにする。

五色台、春になったら再訪したい。次はマムシに気をつけなければ。

 

かんかん石は知っている ?雉と石と五色台?

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春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

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お題「ひとりの時間の過ごし方」

お題「もう一度行きたい場所」

 

 

 

*1:この人の言うことは信用している。会ったことはなくとも信頼できる、そういう文章を書く人なのだ。

*2:かつて朗読劇のイベントを開いていたくらいなので、何かを演じるのが上手いのだ。

*3:「おい、栗林公園はどっちだ、歩くのか?バスか?」

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