職場でケーキを食べた。もちろんクリスマスケーキだ。
今の勤め先はまだ事務所の整備が途中で、椅子や机も足りていない。だから基本的に全員が揃って仕事をすることは無い。自分は総務兼連絡役みたいな立ち位置なのでできるだけ出勤するけれど、ほとんどの人は、用が無ければ職場には来ない。来ても打ち合わせや共同作業が終われば帰ってしまう。
そもそも様々なデジタルツールを駆使して自宅勤務の体制を築いてあることが、会社の特徴でもあり強みでもある。少ない社員と、社員よりは多い外注スタッフが協働して仕事にあたっている。
今日はたまたま、中核となるメンバーの多くが午後に出勤していた。
そして、社長がつきあいで取引先であるケーキ店に注文したクリスマスケーキを取りに行く日でもあった。
いつもの“出勤メンバー”だけでは持てあますホールのケーキ。今日は運良く、「カットで買うより大きいが、バカ喰いするほどでもない量」で食べることができた。
普通の、苺のショートケーキのクリスマスケーキなんて久しぶりに食べる。高くもなく安くも無いスタンダードなショートケーキ。
ショートケーキを食べるとしたら、ものっすごい上等な品か、あるいは「この店は生クリームが美味しい」みたいな理由がある品ばかりだった。
なんだか新鮮な体験となった。
実家で、兄の家族達と食べるケーキともまた違う。これはこれで良いものだった。
こぐまのケーキ屋さん そのさん (ゲッサン少年サンデーコミックス)
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そういえば前の仕事の時も、職場の人達とケーキを食べた。
クリスマスの頃ではない。
夏を過ぎて皆の退職が決まってから、外出のついでに同僚達にケーキを買う習慣ができた。
色々あって全員の退職と静岡撤退が決まってから、役所や取引先に行くことも増えた*1。そんな時には訪問先に近い、そしてもちろん自分が好きな店を選び、帰る前にケーキや焼き菓子を選ぶ。
帰社後には場所や特徴を伝えながら、皆で食べた。
あれは自分なりの「引き継ぎ」だった。
静岡を離れる甘党紳士として、年若き女性2人に「今から楽しめるケーキと店」や「5年後には楽しめる店」それから「友人or家族or恋人と行くとより楽しめる店」など、自分の“スイーツ・ライブラリー”を伝授する行為。静岡のスイーツ・シーンは、若い人達にこそ育ててもらいたい、自分はそのための腐葉土みたいなもの。全てが伝わらなくとも、きっかけになればいい。
それに美味しいものは皆に知ってもらいたい。
別に僕のせいで皆が(そして僕が)仕事を辞めることになったわけではない。しかし1年足らずの短い間とはいえ、一緒に働いた仲間だ。何かを伝えて、何か新しいことのきっかけになれたらいい、そう自分なりに考えた行動ではあった*2。
職場が無くなる前というのは、暇なような忙しいような変な時間が続くもの。先のことがわからない不安を抱えながら、先に繋がらない仕事を続ける。
そういう時に、時間を区切って、良いお茶とお菓子の時間を作れたことは、あのどたばたした会社の、滅茶苦茶な最後の数ヶ月における、数少ない「良かったこと」だと考えている。
いつの間にかこの「お茶会」は当時の社長にも伝わっていた*3。
先月、退職後に会った時に、とても褒めてもらえた。「ケーキ代は経費にして良かったのに」とまで言ってくれた。
我々の望まない退職に対する贖罪ではなくて、どうやら本当に“心意気”を評価してくれたようだ。業界新聞のコラムにそのことを書いたとのこと。なんとも恥ずかしいが、しかし嬉しいことも確か。この人には甘党紳士なんて表現は一度も伝えていないのに「紳士だな君は」と言ってくれた。
そして今日、元同僚から連絡があった。
先週末に、僕が勧めたお店に行ったという報告。友人達にとても好評だったとのこと。
20代前半の人間ではなかなか辿り着けないお店だが行けば必ず気に入る、そう確信していたから、これは本当に嬉しい。
思わず「そのお店を気に入った人は、このお店も行っています」とさらに情報を“伝授”してしまった。
元同僚からは「いつか、私の見つけた静岡の新しいお店を教えてあげたいです」と返信が来た。素晴らしい。
今日は良い日だ。