勤め先の社長は、他の会社の経営者でもある。
というか自分の仕事はその様々なファミリー会社にサービスや商品を供給することなので、いちばんの商売相手が“ほとんど身内”の人達なのだ。
会社の数は多いが、ぜんぶまとめても人数は少なめ。そして皆が顔見知り*1ということもあって、情報が妙な具合に流れてくる。別の言い方をすると、噂話が聞こえてくる。僕が辞める話なんて、「退職を検討中」の段階で知れ渡っていた。
今日はそのファミリー企業の人から、メールを褒めてもらった。
「あなたのメールは素晴らしい。最近、社内で話題になっている。転送され多くの人に読まれている」とのこと。
光栄なことだが、戸惑いも大きい。
今の仕事に就いてから、メールを書く機会は増えた。
人生で最多の“仕事メール”を書いている。業務連絡の7割以上が電子メールかもしれない。
今までホワイトカラーでの仕事経験が少なかったこともあり、自分なりに工夫はしていた。
仕事メールの書き方について本やWebで調べたし、応用もしている。
原則として、簡潔さを最優先としている。
例えば冒頭の定番「お世話になっております。」も、理由が無ければ省く。
結論や依頼事項を1.5行程度にまとめ、その後にずらずらっと情報を連ねる。できるだけ短めに。
最後に改めて、そのメールで伝えたいことを書いて、「以上よろしくお願いします」程度で締めくくる。
まあ、よくある「メールの書き方」と同じだ。
変換辞書に頼って難しい漢字を使うと阿呆に見えるので、できるだけ“ひらく”ことも心がけている。
最初は素っ気無さ過ぎているかと不安だったけれど、社外のアドバイザー的な人からも褒められたので、もう覚悟を決めてシンプル路線を貫いている。
しかし今日褒められた件は、その「簡素な仕事メール」ではなかった。詳細を聞いてみると、週に何回か提出している「役員に宛てた苦情・要望・状況報告の長文メール」だった。
これはつまり、「極めて素行に問題がある、かつ役員の親族でもある同僚についての苦情・要望・状況報告」のメールだ。
こんなもの、自分でも書きたくはなかった。
基本の構成は上述の「簡素な仕事メール」を基としながら、分量はかなり多い。
それでも、感情的にならず、上司向けの表現を守り、提案や代案を交えて「ちょっとこいつはたまらんですよなんとかしてください」と訴え続けてきたのだ。
特定の役員に宛てたメールも多いが、関連する他社の人達も宛先やCCに加えることもある*2。それらが回覧され、どういうわけか高評価を得ているのだった。
しかしこれ、よくよく考えずとも恥ずかしい。
同僚の行状を(言葉を選びながら)述べているのだ。身内の恥だ。
「問題のある同僚」の素行は全社的に知れ渡っているとはいえ*3それに四苦八苦する姿(文章?)まで見られたくはない。
それに、自分としては、ただ感情を理屈の形に練り固めた冗長な文章にしか思えないのだ。大して推敲もしていない。僕だって役員に「MARIATHANKのケーキの良さは…」とか全力で伝えたいし、そのほうが筆が乗るだろう。
というわけで、書きたくもない文章を褒められてしまった。
複雑な気分だ。
普段の業務用「簡素を極めた仕事メール」を褒めてもらえたのならば、明日からはニコニコと今以上に素っ気ないメールを量産するのだが。
「どこかで文章の練習をしたのですか?」とも聞かれた。
まさか「はてなブログで!ほとんど毎日!」とは答えられない。この日記、会社の人達や仕事関係者には秘密なのです。