僕が子供の頃は、「ぶたじる」と呼んでいた。
小学校の学校給食では「ぶたじる」派と「とんじる」派が混在していて、しかし別に論争にもならず、さらに言うとその違いで面白おかしく会話が弾むわけでもなく、とりあえず「豚汁」に2種類の読み方があることが(少なくとも僕とクラスの皆には)当たり前だった。
その「豚汁」を今日は作った。朝から。
家族がサッカーワールドカップを観戦したせいで起床せず、料理を作るのは自分だけ。
朝に「ひと椀で栄養が摂れる料理」として具沢山の豚汁を作ることにしたのだ。自分用の炭水化物は春雨を少量。家族は各自が用意する想定。
以前、九州旅行で買って放置していた麦味噌*1を使う。
何度か料理に使ったものの、なんというか「言うほど特徴があるわけじゃないよね」という感想しか湧かず、ほとんど使わずに保管していた。
先日の三重周遊ではこの麦味噌を使った味噌汁を飲む機会があった。Snugの「しみじみごはん」の汁物が麦味噌の味噌汁。これが抜群に美味しくて、しかも麦味噌の風味が活きていて、なるほどこれならば活用できると、今朝ふと思い出したのだった。
どうやら少し個性のある具材のほうが好みの味になる。
豚肉と牛蒡と葱を多めに入れてみたら丁度良い。
出汁もしっかりした味が合う。今日は鯖節を使った。
豚肉は細く切ってしっかりと胡麻油で炒めた。
隠し味に唐辛子。普通の味噌汁よりも全体に濃厚にした。
本当に少しだけ、にんにくのすりおろしも入れた。
朝はしっかり食べる家なのだけれど、さすがに豚汁は珍しい。
しかもしっかり外食風に濃い味。味噌が多いわけではないけれど、なぜか外食の味付けになってしまった。
全然関係無いけれど、大昔にお付き合いしていたひとの実家では「赤だしの味噌汁に卵焼き」が当たり前だった。その家の誰もが当たり前に食べていて、なにしろお招きされて緊張もしていたから質問もできず、後から聞くことも忘れて、そして今もその小さな不思議を覚えている。
味噌汁の具材と地域・家族の文化について書かれた本は多いが、しかし卵焼きの記述は知らない。
試してみるとわかる。卵焼きは味噌汁と、まるっきり調和しない。普通に美味しいのだけれど、味噌や出汁の味と卵焼きの味が合わさり何かを生じるわけではない。あそこまで非調和な味噌汁も無いのではないか。
今でも、ちょっと変わった味噌味の汁物を作る時に思い出す。いつか街で遭遇したら、近況や思い出話より先に聞いてしまうかもしれない。
トマトの味噌汁は、宿坊料理の本で知った。
赤だし仕立て、トマトはゆっくり温めて、食べる前に黒胡椒を振る。マーガリン(お坊さんだから植物性)を落としても良い。
試してみたら美味しかった。和歌山県の山奥では普通に食べるとのこと。
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*1:自然食品店にあるような味噌より、その土地のスーパーマーケットにある普通の安い味噌のほうが料理には使いやすいと思う。調味料に関しては地元スーパーのプライベートブランドが高水準だったりする。