止血の心得とさよならハンカチーフ

昼休みに職場の周囲を散歩していたら、小学生男子が血をだらだらと流しながら泣いて歩いていた。地面にぽたぽたと垂れるほどの出血。

これはどういう事態なのかと少し緊張する。
とりあえず話を聞くと、段ボールを拾って遊んでいたら、端で手のひらを切ったとのこと。なるほど紙で切ると痛いし、血も出る。

まあ、深い傷ではなくて良かった。
幸いなことに「富士山の天然水」を買ったばかりだったため、それで全体を洗う。それから、綿の手袋(新品未開封:仕事で使うのでポケットに入れたままだった)とハンカチで全体を押さえて止血をする。

血さえ止まれば子供だって落ち着く。
学校は休んで誰かの家に泊まっていると言っていたので、それでは気をつけてと見送った。

今になってハンカチのことを思い出した。
特に惜しくはない。無印良品か何処かで買った、どこでも手に入りそうな品だ。たぶん旅先で必要にかられて、あるいはセール中に衝動買いしたものだろう。
ただ、相手の親御さんが気にするのではないだろうか。
明らかに古ぼけた(しかし清潔なことは確かだ)厚手のハンカチ。これが漫画ならば名前が刺繍されているのだろうが、残念ながらそんな気の利いた設定は適用されない。

怪我をしていて気が動転していたことを差し引いても、やや幼く、不安定な雰囲気の男の子だった。変な怒られかたをしていなければ良いのだが。

 

 

思い返すと、ただの水を買ったのも珍しい偶然だった。
散歩して、気まぐれにコンビニエンスストアに立ち寄った時点で、普段はしない行動だった。そして、暑いから水かコーヒーを買おうとケースの前に立った時は「強炭酸水」を選ぶつもりだった。だがしかし、他のお客さん達が「めっちゃ流行ってる!ばか強い!やばい!」とその炭酸水を指して騒いでいたせいで、今日は買う気が失せたのだった*1
あの時に強炭酸水を買っていたら、あのちびっ子の手を洗うことができなかった。あれで傷を洗ったら虐待である。

 

 

ともかくそんな昼休み。
午後の仕事を再開したら、手首に血が付いていて、同僚に驚かれてしまった。そこで昼休みの出来事を話したところ、どうして平気な顔で黙っていたのかとさらに驚かれる。
面白い話ではないし、子供が怪我をするのは珍しくもなく、洗って押さえたら血だって止まってしまった。昼に散歩をすればお年寄りが挨拶をするような田舎なのだ。他人とのふれあいも日常のひとつ。
頻度は低いものの、ただ滅多に無いだけのことだ。積極的に話すことでもないだろう。僕自身が、血と血の話が苦手なところもあるし。
ただ、平気だったのは確かだ。歳のせいか、子供のトラブルに関してはそれが見知らぬ相手ならば完全に「大人」として接することができる。一緒になって騒ぐことができない。そして、騒がないならば心もそれほど波立たない。甥や姪が怪我をしたら、きっとこういう風にはふるまえない。

そんなわけで本日の日記はこれで終わり。
同僚に雑談では伝えないが、日記には書く。他に書くことも無いので。

 

 

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

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お題「今日の出来事」

*1:最近は迷ったら炭酸水を買う。強い炭酸水も好きだ。甘いソーダの類は数年に一度飲むだけ。

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