フリマサイトの「メルカリ」を初めて利用した。
ふとした思いつきで、Fjallraven社のデイパック「Kanken」をひとつ買って、ちょっとした工作のベースにしようと考えたのだ。
インターネットは怖い。夜中に思いついて、メルカリのアカウントを取得して、お手軽な価格の中古品を注文するまで15分かからない。
何しろ思いつきだから、今回は新品(確か1万円くらいしたと思う)を買う選択肢は考えていなかった。上手くできたら次は新品で試す、程度のもの。つまり衝動買いだ。
先週末に取り引きが成立した。
ちなみに買ったものは2000円と少しという値付け。格安である。
梱包!
で、先ほど届いた。
メルカリユーザーの雑な包装については、Twitterその他で見聞きしていた。なるほどこれがそうかー、と嬉しくなる。時代の空気が我が家にも届いた、そんな気分。
でも雑なのは確かだが、別に悪いことではない気がする。
海外旅行先で、ジュースやカットフルーツがビニール袋に入れて売られていたりする、そういう種類の合理性を感じる。
郵便局員に迷惑がかからず、送料が安く、中身も無事(だって鞄ですから)ならば、スーパーのビニール袋とガムテープで十分ではないか。しかもビニール袋は二重になっていて、外側の1枚が破れても(破れていた)大丈夫という工夫。いいじゃないか。
中身!
問題なのは中身である。
その中身は、なかなかの“使用感”だった。
高校生の頃、はじめて古着屋に行った時のことをふと思い出す。アメリカの人達はこんなにほつれるまでシャツを着るのか、と驚いた記憶がある。ジーンズでも何でも、使い込んだ感じが好まれる時代だったのだが、それにしても買うのに覚悟が要る「ユーズド感」だった。
いや擦れやほつれは大したことはない。
どちらかといえば汚れが気になる。内側に飲み物をこぼしたような染みがある、ロゴパッチが黄ばんでいる*1といった、薄汚れた感じが気になってしまう。
というか、へたりや擦り傷に関しては、僕はそれほど気にしない。しっかりと使い込めているkankenは、むしろ格好良いと思う。
でもこの汚れかたは、僕の想定していた「ちょっとだけ使用感あり*2」とは違う。なんとなく「人ん家の匂い」がしそう。そう、どうしても駄目という訳ではないけれど、他人の家で気にってしまう不潔感、それに近い。
あれあれやっぱり格安かつ即決だったから駄目かな、と一瞬だけ後悔する。だからこその公開されたメッセージのやりとりか、なるほどメルカリ、と次は感心する。そして、それじゃあこの汚れを綺麗にしよう、と決断する。
梱包もそうだが、メルカリの取り引きというのは“こういうもの”なのだと思う。本当に個人間のやりとりなのだ。新鮮だ。
洗浄!
まあ水洗いで良かろう、と念のために検索をしてみる。
「kanken 水洗い」で調べると、どこかのショップブログに「Fjallraven日本代理店に問い合わせたところ、水洗いは風合いが変わるから避けて、中性洗剤を含ませた布でやさしく叩いて汚れを落とせ、と言われました」と書いてあった。他の検索先を見ても、そのブログ記事の孫引きとパクりばかり。ほつれた糸を取りましょう、みたいなどうでもいい情報まで引き写している。
逆にコインランドリーで乾燥機まで使って縮んだ、みたいな記事もある。
どちらにしろ役に立たない。
このkankenの主素材はビニロン。
ビニロンといったら、トラックの幌に使われるくらい丈夫な素材だ。自衛隊のトラックが今もビニロンだと聞いたことがある。
そもそもスウェーデンでは子供が使う鞄。ヘビーデューティなものなのだから、多少の蛮用も耐えるだろう。洗って駄目ということはあるまい。
こういう時は、個人や販売店のブログではなくて、素材名で調べるに限る。実際、いくつかの注意点はあるものの、洗濯は可能と判断できた。
たらいにお湯を張り、酸素系漂白剤*3を少々と洗剤を溶かし、kankenを沈める。適当に揉んでいるとお湯が汚れてくる。
気になるところはメラミンスポンジ(商品名:激落ち君)で擦る。張りのある生地ならば、このスポンジによる汚れ落としはそれなりに役に立つ。下手をするとダメージ加工ジーンズ*4みたいな色落ちをするが、とにかく汚れ落としにはなる。
そのまましばらく浸け置きをする。ビニロンは例外的に酸には弱いのだが、薄めの漂白剤くらいなら耐えるだろう。30分ほど放置してから、よくすすぎ、タオルを何枚か使って水を拭き取る。
結果!
その後、サーキュレーターの風を当てて20分ほど乾燥させて、こんな感じになった。
擦れた部分はもちろんそのままだけれど、全体の薄汚れた感じは消えた。臭いも黄ばみも無し。型崩れなども無い。
風合いは、言われてみれば全体に毛羽立ちが生じて白っぽくなったかな、という程度。
布の角の色落ちは、元々の持ち主による“使用感”。数年履いたジーンズよりは目立たず、チノパンならば“履き込んでいる”くらいのほつれ具合。
考察!
そのまま十分に使える気がする。
当初の目論見では、ショルダーバッグへの大改造を考えていた。しかし今は、とりあえず普通のデイパックとして活用しようと考えている。
とはいえ、細部は修正したい。
ほとんど同じ形の「kanken No.2」を持っていて、そちらは綿の混紡と革素材。単なる色違い素材違いではまるでマニアではないか。
というわけで、ちょこっと手を入れて、自転車散策用にカスタマイズするつもり。控えめにワックスコーティングもしたい。
今日はもう大仕事をした気分だから、このままさらに乾燥させる。
ビニロンは面白い。化学繊維なのに、吸水性がある。吸水性があるのに、30分でほとんど乾いてしまう。
風合いも独特。
旅先で何度か見かけた、明るい色で、ぺらっとしたナイロンみたいなkanken(外国人旅行者の持ち物)はどこで売っているのだろうか。今回の紺色のkankenも、洗い続けるとああいう感じになるのだろうか。
感想!
という感じで、人生初の「メルカリでの取り引き」は完了した。
散々な事を書いたが、でも梱包具合も使用感も(あるいは不潔感も)別に悪感情は持っていない。そういう時代とサービスなのだと思うし、これからの時代はもっとその傾向が強まると考えているので。
変な礼儀作法が生成されるより、よほどいい。
むしろ顔の見えない相手にここまで“蚤の市”ができるなんて、数年前ならば考えられなかった。終末に近所で開催される小綺麗な"フリーマーケット"より、よほど蚤の市らしさがあった。
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…今になって気付いた。
これ、kanken No.2より一回り小さい、kanken mini だ。そして、背面に入っているはずのパッド兼クッションが無い。まあいいや、特に不具合は無い。きっと改造の過程でそんな事は忘れるだろう。