帰宅前に書店に寄り道。本を数冊購入。
とりあえず今読んでいるのが、「地元菓子」という本。
どこか知っている雰囲気、と著者略歴を調べたみたら、あの「暮しの手帖別冊 徒歩旅行」の人だった。
この人の文章は、こういうほんわかした読み物のなかでは、かなり珍しい感じがする。地方に訪れてその土地の風物やお菓子を楽しむのだけれど、その土地の人や物には一定の距離を置く。共感や感情移入や配慮をせず、あくまで都会の人間としてこう感じたのだ、ということを隠さない。普通の旅行者よりも、その辺りの線引きがはっきりしている。こういう“素朴な暮らしと旅”が好きな普通の人達なら、いつの間にか「寄り添う姿勢」になってしまうし、それが良いことだと思い込んでしまうだろう。
人によっては、冷たいと感じるかもしれない。
僕はひとつの魅力だと思っている。余所者であること、もまた旅の楽しみであり、旅人はどうしたって余所者なのだから。
買った本の他に、なんだか気になるタイトルの新刊を発見した。
「フランス人はお菓子づくりを失敗しない」
びっくりした。
主語の大きさが絶妙、かつ、お菓子作りの本として珍しい。
たぶん「フランス人は余分な服を持たず、理想的な自我と生活を保つ術を身につけていて、さらに年収が少なくても幸せになる知恵に溢れている」みたいな一連の書籍・情報が氾濫した頃に企画したのではないだろうか。
あるいは、そういう「フランス人神話」を好む層に絞ったタイトル付けなのかも。
フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~
- 作者: ジェニファー・L・スコット,神崎朗子
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2014/10/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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フランス人は10着しか服を持たない コミック版 ファッション&ビューティ 編
- 作者: 村田順子,ジェニファー・L・スコット
- 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
- 発売日: 2017/04/13
- メディア: コミック
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ぱらぱらっと見本を眺めた限りでは、失敗のしづらいレシピが載った写真付きの料理本、だった。読んでも楽しめるし、レシピも使える、みたいな本。
コラムや街の写真も多くて、好きな人が買えば楽しめそう。
逆にフランス人の(完璧で理想的な)ライフスタイルを学びたい人、そして日本のダメなところを指差呼称したい人には物足りない気がする。
しかし「フランス人はお菓子づくりを失敗しない」である。僕は唐突に、西くんを思い出した。
学生時代の友人であった西くんは、決して挫折をしない男であった。が、彼は挫折に対する感受性というか受容体が無い男だった。何があっても挫折と感じない人間に、挫折は訪れない。
フランス人も似ているのかもしれない。例えばビスキュイが生焼けでも、「今日のビスキュイは柔らかくてぺたぺたしているね、ムッシュー」と言うのだ。ミスではなく、そういうものとして受け取れば、お菓子作りに失敗は無い。「今日のデザートは、シンクから下水に流れる、という形で完成した」とか。
こういうのを哲学というのだろうか。静岡の言葉では、詭弁というのだが。
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
- メディア: 文庫
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