藤枝駅南口から徒歩ですぐのところにある「中華めし屋」の『会飯よこ多』で昼食を。
この店、表記が一定していない。『会飯横多』や『会飯よこた』が看板には書かれている。読みは『ほいはん よこた』だ。
有名店というよりも、大人にとっては懐かしいお店として記憶されている気がする。量が多くて安くてフレンドリー。僕はたぶん10年以上、行っていない。
昔から店内には色紙が沢山貼られている。これは例えば卒業とか転居、進路決定、その他なんでもいいからこの店に記念として残すものとして、定着している。もちろんTV番組(ローカルニュースのグルメコーナーとか)で訪れたレポーターやお笑い芸人、それからスポーツ選手(土地柄か、サッカー選手が目立つ)の色紙もあるが、圧倒的に多いのは地元の人達だ。なんとなく有名な神社の絵馬を思わせる。
今日行ってみたら、その色紙は壁面の天井から床近くまで、全てを覆っていた。いずれ構造材として活用されるのではないか、という程の量。
僕は高校生の頃には何度か友人に連れられて行った記憶がある。
どちらかといえば運動部の男子が喜ぶ、濃い味とたっぷりの量だったと思う。「会飯」という、中華丼っぽいメニューがこの店のメインだが、僕はニラレバ炒め定食が好きだった。ごはん少なめ、と注文する高校生だった。
ともかく今日は唐突に、この「会飯」が食べたくなったのだった。
13時過ぎにお店に入る。ほとんどの席は埋まっているけれど、混雑して待たせるほどではない。
おじさん、おばあさん、おばさん、おねえさん、の4人くらいで切り盛りしていて、客には肉体労働者っぽい人も多い。でもなんだかとても穏やかな雰囲気なのは、国道沿いのチェーン店等とはまるで違う。
たぶん土日には高校生達で賑わうのだろう。今日は女の子の集団がいただけで、彼女達も静かに食事を楽しんでいた。
メニューを見て(10年ぶりに見て)、そして困る。
「会飯」といっても、種類が何種類もあるのだ。「キャベツ会飯」「じゃがいも会飯」「きのこ会飯」等々、迷ってしまう。中華料理店の中国語表示のほうが、まだ内容を推測できる。「よこ多会飯」や「五目会飯」といった、まずはこれから、というベーシック・メニューが存在しない。価格だって横並び。
しかも周囲の常連っぽい人達は、普通に炒飯や焼肉定食や湯麺を食べている。なぜかソース焼きそばなんてものを食べる人達もいた(有名なのかもしれない)。
ずいぶん迷った。昔の記憶をたぐり寄せるに、たしか「キャベツ会飯」は、ごはんの上に回鍋肉が乗ったような品だったはず。他のものは、まるで覚えていないし、たぶん食べたこともない。
こういうのはなんとなく「孤独のグルメ」みたいだな、と思いつつ、「たまねぎ会飯」を注文。
たまごスープも一緒に注文しようとしたら、「会飯にはスープが付属する」と教えられた。この辺りも「孤独のグルメ」だ。
ごく僅かな待ち時間で、「たまねぎ会飯」が目の前に置かれる。
色の濃いあんかけに、炒めたたまねぎがたっぷり、豚肉も多い。他には人参などが少し。
このキューブ状のものは何かと囓ったところ、生姜だった。たぶんこれは単なるミスだろう。でも別に気にしない。
ごはんも、とても多い。
といっても、「バカ盛り」ではなくて、女性でも平気な人はいる感じ。老夫婦だって、きちんと食べていた。運動部の高校生ならば、大盛りを注文するだろう(そして帰宅後に、夕食も食べる)。
こんなに沢山のたまねぎを食べて大丈夫なのか、と思うけれど、味は悪くないから食べ進めてしまう。同じものを延々と食べるとある種の元気が湧く。もりもり食べる、という語感そのものの食事だった。
やっぱり自分は中華丼系より、ニラレバ定食が好きかな、と思いつつ、しかし完全に満足して店を出たのだった。600円という価格は、破格といっていい。
こういう店は好きだ。
B級グルメやソウルフードを謳わず、静かに街の人達の胃袋を満たす美味しい飲食店。
メニューには、店主敬白のポエムも、お店の歴史を記したページも無い。シンプルで押し付けがましくない。昔のku:nelならば、上手く写真記事にしてくれそう。
良いお店だと思う。
なかなか行く機会は無いが、行けば満足できる。たぶんまた数年後に、ふと訪れたくなるだろう。美味しかった。
紹介記事では「青いお店」と書かれているが、青い印象が無い。確かに昔は青かった気がするが、今日はどうだったのか、まるで覚えていない。これが加齢か。