エンストとインフル

職場の、やや偉い人と雑談をする機会があった。
この人は「もうすぐ定年、そして妻子もいるのに、一人旅が趣味」という事を自らの(愛すべき)キャラクターとして話したがる。むしろ、自分のそういう部分を伝えるために、旅について話すきらいがある。
旅の話をする時は旅についてだけ話せばいいと僕などは思うのだが、どんな時でもまず「いや俺ね、奥さんも子供もいるんだけどさ、どうしても一人が気楽な時があって…」から話が始まる。「いい歳して、変わってるだろ?」と。

そして海外出張の時は、上手いこと数日間の旅を最後に仕込むことでも有名だ。そういう事が今の時代でもできるのが不思議なのだけれど、他の人と別れて、週末を利用して少し遊んでから帰国する。

 

そんな旅慣れた人なのに、国際感覚がちょっとおかしい。
「フランス人というのは、わかる英語でも通じないふりをする。フランスではフランス語を使え、と威張っているのだ」という話は僕も聞いたことがある。でも、それを実体験に結びつけるのに、「フランスでレンタカーがエンストした。でも、“エンスト”と言っても通じなかった」という体験談をするのだ。アメリカでもイギリスでもエンストは通じないんじゃないかな、と僕は思うし(En-sto!)、この人はTOEICも仕事としてある程度の成績を求められる職種と立場なんだけど、そういうズレが話のあちこちに確認できる。
きっと、海外で「満タン」とか言っているのではないか、と想像する。「パソコン」とか、巻き舌で言いそうだ。「インフル」は絶対に使っているだろう。

 

僕はどういうわけか、この「インフルエンザ」の略称、「インフル」が気になって仕方がない。いつの間にか当たり前の言葉になっていた。
少なくとも、仕事の場、色々な立場の人が集まる場では、避けたほうが礼儀として正しいと思うのだが。たぶん略す意義を感じられないからだと思う。でもTV番組から仕事中の会議まで使われている。

略称とは違うけれど、以前、海外からのインターン生に対して、「携帯電話での写真は、日本では写メと呼ぶ」と教えている人がいて、うひゃーとなった。それ違うで、あんたの若い頃の流行り言葉やねん、と言いたい。さすがに古い。
古臭くて気持ちが悪い事は確かなのだけれど、でも少しだけ可笑しみがあるのも嘘じゃない。
発展途上国の人がエンジンを「ヤマハ」と呼んだり、小型バイクは全部「ホンダ」だったりする、そういう雰囲気がある。わからないまま受け入れて、定着した感じ。
明治時代の「メリケン粉」のような趣きもある。時代の臭みがある言葉は、いつだって言葉に興味が無い人が伝えていく。

 

戦争中の暮しの記録―保存版

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