寒い。静岡県中部なのに、日没直後の外気温が8℃しかなかった。車の温度計の値だから、実際はもっと低いのではないか。夜になったら、さらに冷えるだろう。
これくらい寒いと、外に置いてある多肉植物のいくつかは駄目になってしまうだろう。緊急避難として玄関に移すか、自然の摂理に任せるか、思案している。
さて今日は、昼食を「つきさむ」で食べた。
「1月のごはん」は以下の通り。
- 鮭のレモンソース和え
- おからと豆のサラダ
- なすの揚げ浸し
- 青菜のゆず味噌かけ
- ご飯と味噌汁とサラダ
- ロールケーキとコーヒー
相変わらず美味しい。外食というより、料理の上手な家に招かれた時の“気の利いた味”を思わせる。料理上手の友人知人と違うのが、ほぼ全ての料理がその“気の利いた”水準以上なところ。本当に、ちょっとした何かが違うだけなのだと思うのだが、それがわかる時もあれば、さっぱりわからなくて楽しい時もある。良い店だ。
午後に静岡市美術館へ行く。
「スタジオジブリレイアウト展」を鑑賞。
アニメ制作における「レイアウト」とは何か、程度の知識はあった。鉛筆書きされたラフな絵と、塗ったというより印をつけただけのような色鉛筆、そして手書きの指示文。角に押された確認印。アニメ好きならば、何かの折りに見ているのではないか。それこそ「コンテ」や動画よりも目にする機会は多いと思う。
しかしそのレイアウト用紙を、ここまでの物量で見せる展示も珍しい。「原画」や「背景画」ならわかるし、美術展も過去にあった。レイアウトを、しかもジブリのほとんど全ての作品や、ジブリ以前の宮崎駿作品のそれを並べる展覧会は、珍しいと思う。
入場時のパンフレットに「真面目に見ると2時間」と書いてあった。僕は結局、2時間と40分かかった。「ホーホケキョ となりの山田くん」等はささっと通過したにもかかわらず、である。
それくらいの見応えがあった。
入場直後の展示が混雑していて、入り口で行列ができていた。その列のところで話すようになった(たぶん人畜無害に見えたのだろう)大阪のアニメーション専門学校生であるという女子2名が言うには、ジブリのレイアウトはことさら丁寧に書き込んであるとのこと。この2人には展示ルートのあちこちで再開し、興味深い話を聞くことができた。研修や宿題やアルバイトで既にアニメ制作スタジオに出入りしているらしいが、“指示書”としての役割を考えると、過剰なくらいの完成度だと言う。
よく知らずに観ている人達が、「なるほどこれに色を塗ってアニメになるのかー」と勘違いするのもわかる気がする。確かに指示書、意思疎通ツールのレベルを超えた絵がほとんどだった。
混雑していたし、もう少し静かな環境で観たかった気もするけれど、なにしろその量と質には圧倒されたので、これはとても良い企画展。
妙な工夫をせずに、基本的には作品毎にレイアウト画を展示し、ところどころで実際のアニメーションと照らして意味するところを示す。
「千と千尋の神隠し」エリアは天井までレイアウトが敷き詰められていたり、ちょっとした演出があちこちにあったけれども、基本的には画を眺めていく。セル画を1枚も見ないジブリの展覧会は初めてだった。
しかしスタジオジブリ、大したものだ。「こんなシーン、知らん」という展示がまるで無かった。あーここはこういう意図でー、とわかるととても楽しい。なぜか1枚しか残っていない「魔女の宅急便」とか、気になるところもあった。
アニメ業界というのは、「クラスでいちばんマンガが好きで、上手な奴」が目指すところだったと思う。しかしこのレイアウトを見る限りでは、かなり特殊な技能、天性の資質が問われるのではないか。
まだ「3Dモデリングで作った建物に人物を合成する」ほうが、僕達の身体感覚に合っている。「スライドさせることで視点が動くから、パースを少しずつ変えた歪んだ街並みを背景に用意し、そこに配置する(まだ描いてもいない)キャラクターの動作タイミングを数字で示す」なんてことは、ただ絵が上手いだけでは絶対に到達できない特殊技能だ。
そんなため息が出てしまう巡回展を堪能した後は、ミュージアムショップで買い物。甥っ子姪っ子に小さなものをいくつか、自分用に何か買おうかと悩み今日は止めておく。ミュージアムショップだけなら後でも入れるから、まずは冷静に。
しかし寒い。
こういう日は寝るに限る。布団は電気も灯油も使わない。睡眠こそエコロジー。ジブリっぽい夢を見そうか気がするけれど、どうなのだろう。
まるで関係無いけれど、このマンガが格別に面白かった。
「それでも町は廻っている」や「ご先祖様万々歳」や、それから「究極超人あ〜る」が好きな人なら楽しめる。アニメ作り、少人数の部活もの、そういうものが好きな人にもおすすめ。